津波警報が発令され、福島原発事故の悪夢が再び頭をよぎった11月22日のM7.4福島沖地震。気象庁は「東日本大震災の余震」との見解を示したが、はたしてそうなのか。ニュージーランド地震との密接な関係を論じ、これは単なる「予兆」なのだと、専門家が不気味な警告を発するのだ。
琉球大理学部の木村政昭名誉教授が言う。
「太平洋プレートは北から南までまんべんなく押してくるんですよ。その圧力がかかった結果、弱い部分が割れて地震が発生する。3.11の東日本大震災は、ニュージーランド地震から17日目に発生しましたが、今回もひずみがたまった弱い部分が割れるだろうと注意を呼びかけていたら、案の定でした。しかし、これは前兆にすぎません。“本命”とも言うべき巨大地震が近く、日本近海で発生すると、私は見ています」
木村氏によれば、ニュージーランドと日本近海はプレートで連動しており、地震が「伝播」するという。今回の福島沖地震も、11月14日に起こったニュージーランド地震から8日後のことだった。木村氏はそのニュージーランド地震直後、自身のブログに〈今後、日本の地震空白域での大地震の発生が心配されます〉との予測を書いていた。
北海道から九州まで、地震の空白域はあちこちにあるが、木村氏がこれまで繰り返し主張しているのは、伊豆・小笠原沖。海底噴火で拡大を続ける西之島付近に当たるという。
「フィリピン海プレートの東縁の地震の空白域です。先般起きた鳥取地震も、ここのプレッシャーの間接的な影響とニラんでいます」
では、もし伊豆・小笠原沖の空白域で巨大地震が発生したら、日本列島にはどのような被害をもたらすのか。木村氏が続ける。
「地震動などの直接的な影響はさほどでもないでしょうね。大きな揺れといっても、東京で震度5程度のものになると見ています。しかし、津波はそうはいかない。フィリピン海プレートは太平洋プレートに比べて地盤が軟弱なため、海底が大きく沈降した場合、大津波が発生するおそれがある。津波は同心円状に広がっていくので、太平洋側一帯は大津波の警戒が必要になります。西日本、沖縄などの離島も心配ですが、これまで津波の被害をあまり受けなかった東京湾も津波が入ってくるかもしれない」
東京湾は三浦半島東端の観音崎(神奈川県横須賀市)と房総半島南西部の富津(千葉県富津市)を結んだところで内湾と外湾に分かれ、たとえ津波が来ても、外湾と内湾の狭まった境界でエネルギーが吸収され、津波の心配はないと言われてきた。事実、気象庁もそう説明したことがある。
だが、東日本大震災では内湾の葛西で2.6メートル、富津で3.6メートル、三浦半島北部で5メートルの津波を観測した。それ以上の大津波が襲ってくるおそれは十分にあるのだ。仮に10メートル規模の大津波が東京湾に入ってきたら、沿岸に張り巡らされた防潮堤など、全て破壊されてしまうに違いない。
11月14日のニュージーランド大地震は、満月(フルムーン)がさらに地球に接近し巨大に見えるスーパームーンと重なってしまったため発生したと言われた。元アメリカ地質調査所の地質学者は「巨大地震は満月と新月の日に起きやすい」と言っているが、実は東日本大震災も史上最大のチリ地震(1960年、M9.5)、スマトラ島沖地震(04年、M9.3)もフルムーンの日に発生しているのだ。
木村氏に確認すると、
「フルムーンは引力が最も大きくなり、割れそうで割れないでいるプレートの最後の一押しになると言われていますが、私自身は地球内部の力で割れると考えています」
次のスーパームーンは18年1月1日。再来年の元日、五輪開催に向けて着々と準備を進めている東京を、巨大津波が襲うことになるのだ。
最近、東京都民の地震への危機感が薄らいでいる。4年前には、「4年以内にM7級の地震が70%」という東京大学地震研究所の衝撃の発表がマスコミをにぎわせた。ところが今は「30年以内に64%」「5年以内に28%」(京都大学防災研究所)などと変化。もう一度、巨大津波に対する危機感を持つべきだろう。