新たな療法が浮かんでは消え、消えては浮かぶ育毛・発毛法だが、アメリカで昨年、最も注目を集めた発毛法のが、その名も「バンパイアPRP」。吸血鬼バンパイアから名前をとった、いわば「吸血療法」である。
「PRP(Platelet-Rich Plasma)療法というのは、自身の血液を採取し、遠心分離機にかけてPRP組織(血小板を濃縮したもの)を抽出。それを患部に注入するというものです。PRPはもともと、体内にある血小板を濃縮したもので、新しい組織や細胞の成長を促す栄養素が豊富に含まれており、これを患部に注入することで治癒力をより加速することができる。リハビリなどで効果がみられなかった慢性アキレス腱炎、足底腱膜炎などの治療法として有効だと、FDA(米食品医薬品局)にも認められています」(山田クリニック・佐藤整医師)
この療法は、アメリカ・マイアミ大学の外科医ロバート・マークス教授によって1990年頃に行われたと言われている。教授は自著の中で、次のように述べている。
「血小板に含まれている増殖因子は、創傷に対して驚異的な治癒力を持っており、血小板は創傷治癒を開発する重要な細胞であることを発見した」
ニューヨークヤンキースの田中将大投手が右肘靱帯の部分断裂の治療にこの療法を取り入れたことで知られているが、女性のしわ、シミ、目の下のクマなどが目立つ肌への美容治療にも応用されて成果を上げており、これが発毛療法へと進んだのである。ヘアーコンサルタントで美容師の工藤澄雄氏が言う。
「治療の方法は、患者の体内から採取した血液を加工してカクテルを作り、これを頭皮に注射する(もちろん麻酔を施す)。これによって頭皮や周辺の血行を促進させ、髪の成長を促します。自分の体から採取した血液を頭皮に直接注入することで発毛を促す手法ですから、吸血鬼のバンパイアになぞらえて命名されたと言われています。一定の効果が見られた、植毛よりも頭皮を傷つける必要がない、などとアメリカで人気になり、我が国でも治療を行う医者が出てきました。ただ、この治療を行う医師はやはり少ないのと、少々費用がかかるのがネックです」
関心のある向きはじっくり調べてみるといいだろう。
(谷川渓)