大会初日の第2試合で1回戦屈指の好カードが実現した。昨秋の明治神宮大会覇者でプロ注目のスラッガー・安田尚憲擁する覆正社(大阪)と、投の櫻井周斗と打の金成麗生がチームを引っ張る日大三(東京)。もちろん両校とも堂々の優勝候補で戦力は甲乙つけがたい。まさにがっぷり四つの好ゲームへの期待が必至なのだ。
だが、この好カード、東京対大阪という視点で見ると、少し趣が変わってくる。なんと春の選抜において現在東京勢は大阪勢に対して9連敗中なのである。その屈辱の歴史は87年の準々決勝から始まった。ともに優勝候補同士の対戦となった試合で帝京が延長11回の激闘のすえ、PL学園の前に2対3でサヨナラ負けの惜敗を喫する。以降、同大会の決勝戦で関東一がPL学園の前に1対7で完敗。90年には初戦で帝京が北陽(現・関大北陽)の前に3対4で9回裏に逆転サヨナラ負けし、94年にはPL学園の前に初戦で拓大一が0対10、翌95年にも2回戦で創価がPL学園に0対9と圧倒的大差で敗れてしまった。02年と04年に出場した二松学舎大付はともに初戦で大体大浪商に4対5、大阪桐蔭に0対5で敗れ2回連続初戦敗退。14年には二十世紀枠で出場した小山台が優勝候補の一角だった履正社の前にまるで相手にならず、0対11と大敗で初戦敗退。続く15年は今大会同様に有力校の一角に挙げられていた東海大菅生がやはり優勝候補の大阪桐蔭と1回戦で激突。好勝負が期待されたが、序盤から失点を重ね、0対8の完敗だった。
そんな状況のなかで、またも東京勢は初戦で大阪勢とぶつかることになったワケである。
過去9回の対決のうち、初戦での対戦がなんと6回。しかも通算の対戦成績でも、夏の選手権では8勝6敗と勝ち越しているのだが、春の選抜では6勝17敗と大幅に負け越しているのである。東京勢の日大三にとってはなんとも不吉なデータではある。
しかし、唯一の希望はこの9連敗の中に日大三が含まれていないこと。そして日大三は春夏通算の大阪勢との対戦で3勝1敗と勝ち越していることだろう。今回負けると、まさに屈辱的な10連敗を喫することになる東京勢。昨秋の明治神宮大会王者で今大会も優勝候補筆頭の履正社相手に、この“負の連鎖”を断ち切ることが出来るか、注目である。
(高校野球評論家・上杉純也)