竜王戦トーナメントの2回戦で敗れ、公式戦の連勝記録が29でストップした藤井聡太四段。それでも稀代の中学生棋士の活躍には引き続き興味の目が注がれており、7月6日には大阪市の関西将棋会館で行われた順位戦C級2組の対局が各メディアで報じられた。
その対局では各社とも、藤井四段が昼食に830円のカレーうどん定食を選んだと報道。肝心の将棋ではなく、昼飯のメニューが話題となる状況に変化はないようだ。その藤井フィーバーについて、電王戦などを取材してきたIT系のライターが顔をしかめ、こんな指摘をする。
「かつて将棋の取材といえば、全国紙か専門誌の観戦記者に限られていたもの。それがここ数年は将棋ソフトの発展に伴い、我々のようなIT系のライターも増えてきましたが、最初のうちは場違い感が半端なかったものです。それでも丹念に棋譜を分析するなど真摯に将棋に取り組むことで、最近ではやっと将棋ライターの一人として認めてもらえるようになってきました。ところが今回の藤井四段を巡っては将棋を知らない記者が大挙して取材に訪れており、現場はひどい混乱に陥っています」
中でもひどいのがテレビ局の取材だという。新聞社と違ってテレビ局には将棋の観戦記者がほとんどいないこともあり、藤井フィーバーもあくまで事件報道の一環として捉えているようだ。
「彼らのほとんどは対局を見ても状況が理解できないため、対局中も別室でスマホを見たり、パソコンで別の作業をしてばかり。本来ならどんな将棋を指しているかに注目すべきなのに、藤井四段が昼食を頼むといったテレビ向けのわかりやすい動きばかりを報じています。以前から将棋を取材している側にしてみれば正直、藤井フィーバーはありがた迷惑ですね」
どんな鋭い手を指しても、将棋を知らない人にとっては「絵」にならない。そんなテレビ局の認識が、昼食を巡るシーンばかりを報道し続ける理由になっているようだ。
(金田麻有)