原氏が過去の女性問題で脅され、元暴力団の人間に口止め料として1億円を渡したことが12年、「週刊文春」に報じられた。その後、名誉毀損を巡る法廷闘争となったが、昨年6月に巨人は敗訴。原氏が反社会的勢力の男に金銭を渡していたことが「判決」として正式に認定されてしまったのだ。
「侍ジャパンは株式化されており、広告スポンサーやチームスポンサーを独自に集めるなどの資金集め、営業活動を行っています。とりわけスポンサーサイドは反社会勢力の問題に神経質なので、広告代理店側から原氏が監督ならばお金が集まらないと判断されたんです。しかも、東京五輪はアマチュアとの合同作業なのでなおさらグレーな人物には拒否反応が生まれます。巨人も野球賭博事件で負った黒いイメージを払拭するのに必死で、裁判では原氏を守ろうとしたとはいえ、それを最後に決別を決めたのかもしれません。実際、原氏は今年の野球殿堂入りの候補者でしたが、それらの問題が影響して選ばれなかったと言われています」(広告関係者)
東京五輪で代表監督に返り咲き、新たな栄誉を手に入れることがかなわなくなった原氏だが、古巣の巨人にも居場所がなくなりかけているというわけだ。
「侍ジャパン監督を読売グループに潰されたことに怒り心頭のX氏が、すでに他球団での監督復帰を画策し始めたという話も伝わっています。また、X氏と関係するメディアが稲葉ジャパンの揚げ足をどんどん取ってくる危険性もありますね」(NPB関係者)
こうして、原氏の再登板が流れた侍ジャパン強化委員会が、全会一致で大慌てで次期監督に選んだのが稲葉氏だった。小久保氏で失敗したにもかかわらず、監督未経験者を選んだのだ。表向きの理由として「選手、コーチとしてWBC、五輪などを経験していて、豊富な国際経験を持っている」とされているが、国際経験ならば、もう一人の監督候補だった中畑氏も、アテネ五輪で長嶋茂雄監督(81)に代わって代行監督を務めている。しかも、中畑氏にはネームバリューがあり、スポンサーの引きも大きいだろう。それでも、なぜ稲葉氏を抜擢したのか──。
「イチロー(43)と大谷翔平(23)ですよ。中京大中京高出身の稲葉氏は、同じく愛知出身のイチローとは親交があり、実際、侍ジャパンの監督に就任した際、すでにLINEでやり取りをしています。大谷とは日本ハムでともに戦い、慕われている。この大物2人の信頼を得ている稲葉氏ならば、メジャー選手の不参加が確定的な東京五輪ですが、イチローと大谷を何らかの形で協力させることが可能だと考えたようです」(スポーツライター)
もちろん3年後に46歳になっているイチローが現役でいるかどうかは不透明だが、選手での参加は無理でも、臨時コーチなどの協力を取りつけるなど選択肢はある。
また、大谷の今オフのメジャー移籍も不確定だが、時期が遅れれば、その間は侍ジャパンに招集できる。すでにメジャーで活躍しているはずの3年後の五輪出場は絶望的としても、五輪までには強化試合が多く組まれている。
「19年には『プレミア12』もありますからね。メジャーに移籍するまで、大谷が侍ジャパンに参加して盛り上げることも、稲葉-大谷のラインがあれば、期待が持てます。それに、イチロー、大谷が加われば、懸案事項であるメディアやスポンサーの関心も高まります」(スポーツライター)
とはいえ、肝心の稲葉氏の監督としての手腕は、まったくの未知数。金メダル獲得を狙う指揮官としては不安が残る。
「今年のWBCでは、不調の中田翔(28)を立て直したとも言われましたが、これはもともとの師弟関係からスムーズに指導できただけのこと。各球団の主力がそろったチーム内では『稲葉さんって何もしなかったよね』という声も少なくありませんでした。しかも、まだ球界に広い人脈はなく、コーチ陣も金子誠氏(41)や建山義紀氏(41)ら、指導者経験のない元日ハム勢で固めるのが有力と見られている」(スポーツ紙デスク)
監督としての実績はもちろん、東京五輪での金メダル獲得を目指すのならば、原ジャパンが一番の近道だったことは誰しもが認めるところだろう。
不可解なもの別れを引きずり、侍ジャパンが迷走しなければいいのだが‥‥。