「公開中の新作『アウトレイジ ビヨンド』は関東ヤクザと関西ヤクザの抗争です。そこに俺がどう絡んでいるのかは、劇場で見てもらうしかないですね」
「アウトレイジ」シリーズには、北野組の常連俳優は一切登場しない。これは監督の方針だということなのだが、過去3作品の北野映画に出演している白竜だけは例外ということか。
役者にとって北野映画に出ることは何よりの名誉。前作「アウトレイジ」で“死亡”した椎名桔平は「双子がいたということで、どうにか使ってください」と北野監督に復帰を懇願したそうだ。今作に出演した高橋克典も「通行人でもいいから使ってください」と出演を志願したほどである。
「現場で感じたんですが、今までの北野映画の演出と『アウトレイジ』シリーズでの演出は、かなり変わってきてると思いますよ。でも、俺の出演シーンは相変わらずでしたね。あるシーンで、『今のセリフ、俺、ちょっと呂律が回ってなかったかも』と聞いたんです。監督は『いい、いい。大丈夫』と、そのままOKでしたね。俺への演出は『その男、凶暴につき』から23年たっても、変わらないんだなと思いました」
キム・ジウン監督の「グッド・バッド・ウィアード」(08年)に出演するなど、韓国芸能界でも活躍する白竜。日本の芸能に閉鎖的な韓国だが、韓流スターたちも皆、北野映画には明るく、特に「その男、凶暴につき」は感銘を与えているという。
「イ・ビョンホン、チャン・ドンゴンも観てましたね。チャン・ドンゴンは『あの清弘の役は、演技じゃなくて、兄さんの素ですよね?』とか言うから、『バカヤロー、計算された演技だよ』って言ってやりました(笑)。韓流、香港スターたちは北野映画に出たがってるのばかりですよ」
ジュード・ロウやサミュエル・L・ジャクソンらのハリウッド俳優たちも来日の際は、北野監督を訪ね、直接出演を申し込むという。まさに世界の巨匠である。
「俺もいろんな監督と映画をやらせてもらいましたけど、『HANA‐BI』(98年、日本ヘラルド映画)の時に気づきました。北野監督が動いた瞬間にスプリクター(補佐役)、カメラマン、照明が個々に動きだすという、あうんの呼吸がすごいんです。あれだけの雰囲気を持っている監督は今の日本にはなかなかいませんね」
白竜は、そんな監督が「世界のキタノ」前夜にこぼしたひと言が忘れられないという。「たけしさんと飲むと映画の話はほとんどしないんですけど、『HANA‐BI』を撮り終えたあとに飲んだ時、冗談っぽく『今度の映画、ベネチア国際映画祭に持って行くんだよね。金獅子賞、獲っちゃったりして』とか言ってたんだよ。そしたら、本当に獲ったからね。本当にすごい人だなと思いました」
世界を股にかける、北野監督の世界観はどこまでも広く果てしないようだ。