京都大学出身の千葉ロッテ・田中英祐投手が戦力外通告を受けた。日刊スポーツによれば、「ブルペンでは天井にぶつけ、地面にたたきつけた。150キロ近い球速は、120キロまで落ちた。イップスを疑い、自分で見つけたメンタルトレーナーにも通った」という状況にまで陥り、昨年の冬にオーバースローからサイドスローに転向していた。
投球フォームを変えて挑んだ今季も、二軍成績3試合1勝0敗、投球回2回1/3、防御率27.00、被安打2、7四死球、7自責点とあれば、戦力外も仕方がなかったのかも知れない。
10月26日に行われる今年のドラフトの目玉選手の一人として挙げられているMax150キロ左腕・宮台康平が東京大学にいる。いずれ、東大vs京大のプロ野球としての投げ合いがあれば…と期待していたファンもいたかも知れないが、田中がトライアウトで他球団に合格しない限り、それも難しい。あるプロ球団のスカウトが「高学歴投手」についてこう話す。
「プロ野球にはこれまで何人かいますが、そういう選手ほどパワーピッチングを求める傾向があるように思います。それが非常にもったいない。他の選手よりも『頭のキレ』があるのだから、技巧派を目指したほうが成功する確率が上がるはず。何しろ、彼らはプロに入るような選手たちが、少年時代からまさに『野球漬け』で成長してきた時間の、少なくとも一部を勉強に充てていたわけです。その練習量の差を埋めることは難しいですよ。であれば、野球だけで来た選手よりも、はるかに『強い』その頭脳を駆使して勝負してほしいと思うんです」
高学歴の投手といえば、二浪の末、学力で早稲田大学に合格、プロ野球の道へ進んだ、元・千葉ロッテの小宮山悟がいた。MLBも経験し、再び日本球界に復帰した際には「シェイク」と名付けた超スローボールを投げていたことが記憶に新しい。
二浪の末の早稲田からプロ野球。この小宮山と同じ経緯を辿り、日本ハムファイターズに入団した江尻慎太郎も、クレバーな投球で長い現役生活を続けた。さらに、最後にユニフォームを着たソフトバンクの斡旋で一般企業に就職。これも、高学歴のなせる業だろう。
三井物産の内定を蹴って、プロ野球の道を選んだ田中英祐。トライアウトを受けて、プロへの道を繋げるか、第二の人生を選択するのか、その行方に注目したい。