3年12億という契約内容に見合う活躍を見せぬまま、松坂大輔が福岡ソフトバンクホークスを退団した。この3年間、1軍での登板は1試合(2016年)、しかも1イニング5失点の内容だが、なおも現役にこだわっているあたり、スピード違反&身代わり出頭の頃が生ぬるく感じるほどに野球ファンの目も、はるかに冷ややかなものになっている。
世の「松坂世代」を中心とする30代後半のプロ野球ファンにとって、この現状、評判はあまりに寂しい。
憧れだった清原和博の「薬物逮捕」という無様な晩年を見せつけられ、心の傷を負った我々にとって「松坂」という同世代の「自慢」まで失ってしまいたくはない。
そこで、改めて「怪物」だった頃の松坂大輔に思いを馳せてみたい。
高校3年、夏の甲子園での「対PL学園の力投」「決勝ノーヒット・ノーラン」に締めくくる、レジェンドを打ち立てまくった公式戦44戦無敗。西武ライオンズ入団後の「初先発で時速155キロ」、千葉ロッテの黒木知宏と投げ合って惜敗し、「必ずリベンジします」と発言し、実際に1週間後に再び黒木と投げ合って「リベンジ」(この年の流行語大賞に選ばれた)を果たすといった規格外ぶりで、高卒新人として史上初のベストナイン、堀内恒夫(巨人)以来33年ぶりの新人王も獲得した。
プロ野球選手を94人も輩出した「松坂世代」。同じ投手だけでも杉内俊哉、和田毅、藤川球児…錚々たる面々の超黄金世代の頂点に君臨し、球界最高打者・イチローとは、見ごたえある名勝負を繰り広げた。ルーキーイヤーから3年連続の最多勝、第1回WBCでのすさまじいピッチング、メジャーリーグ・ボストン・レッドソックスへの入団、2度目のWBCでのMVP…。松坂が本物の「怪物」だったことは間違いない。
「現役にこだわる」ということ自体、恥じることではないが、結果として「何もしていないのに多額の年俸をもらっていた」という事実は「晩節を汚す」ことに等しい。ネット上でも非常に厳しい声が噴出している。
「ソフトバンクに年俸を返すべき」、「今の松坂を獲得する球団があるわけない」、「アレは、松坂に似た何か」…。日本ハム・大谷翔平のメジャー挑戦が決まり、今後、引き合いに出されることも増えそうな松坂が、この「でも、今は…」な状況であってほしくないのだが…。