かつて名勝負を繰り広げた球界のスーパースターがそろって岐路に立たされている。ソフトバンクを退団した松坂大輔と、マーリンズから契約更新されなかったイチローだ。一転して「無所属」となっても現役続行を目指す2人は、茨の道をどう生き抜いていくのか──。
かつて「怪物」と呼ばれた男は見る影もなかった。チームがCSファイナルステージを突破してから数日後の出来事だった。あの松坂大輔(37)が、何かを思い詰めたかのような表情でヤフオクドーム内の球団事務所に姿を見せたのだ。実はこの前段階で、球団側から来季契約について、一度出場登録を外し、新たにコーチ契約を結び直して選手としての復活を目指す案が提示されていた。ところがこの日、一人で球団事務所に現れた松坂は、熟考の末、その譲歩案を拒否してしまったというのである。
「現役を続けたいと思っています。今の気持ちのままでは僕にコーチなど務まるわけがない。燃え尽きるまでマウンドに立つ覚悟です。他球団で何とかもうひと暴れしたい」
松坂はそう熱く語りかけたと聞く。だが、その場に居合わせた球団幹部は松坂の言葉に思わず耳を疑ったという。別の球団関係者も、
「たとえコーチであっても、ここまで恵まれた契約は、ウチ以外のどの球団も用意できるものではないはず」
と理解に苦しむ表情を見せる。
それだけではない。今回のコーチ契約プランが破談になったことで、孫正義オーナー(60)と王貞治会長(77)も松坂に心底あきれ返っていたというのである。
「これまでもオーナーと会長は松坂を一貫して擁護し続けていた。特にオーナーは松坂がまったく働かなくても『彼の存在自体がチームに好影響を与えている』と信じて疑わず、文句を口にすることもまったくなかった。ところが、腐心しながらも何とかまとめ上げたコーチ就任プランを松坂本人が一蹴。その不義理によって、それまでかばい続けていたオーナーと会長、ホークスの幹部たちもブチ切れて『じゃあ勝手に出ていけよ』となったんです。球団と親会社のトップに総スカンを食らって出ていったのだから、ホークスとはもう完全にケンカ別れと言い切っていい」(前出・球団関係者)
推定で3年12億円もの破格契約を結びながら、1軍登板はたったの1回。右肩の負傷も手伝ってコンディションは崩れっぱなしとなり、3年間、まともに働くことができなかった。今や商品価値が「ストップ安」のレベルまでに急落した元怪物を拾う球団ははたしてあるのか──。
「かなり厳しいと思います」
と指摘するのは、パ・リーグ球団のスカウトだ。それでもあえて前向きに、こう補足した。
「可能性があるとすれば、3年前の日本復帰時にも興味を示した巨人やDeNA、そして古巣の西武あたりが、超格安の育成契約なら救いの手を差し伸べてくれるかもしれない。とはいえ、せいぜい1000万円がベースのインセンティブ契約となるでしょう」