とはいえ、これまで北朝鮮のもくろみはことごとくトランプ大統領、安倍総理の「圧力路線」の前に、苦戦を強いられてきた。そこであの手この手で懐柔しようと、さまざまな「条件」を持ちかけてきたという。
「拉致被害者家族の横田夫妻と、娘のめぐみさんの孫と一緒にシンガポールやベトナムなど第三国で住みませんか、という話を提案してきたんです。また、森友学園や加計学園で安倍政権の支持率が下がったのを見計らって、北朝鮮側から『日朝協議を進めましょう』と持ちかけてきたこともあった。それで10月の衆院選の前には、『拉致被害者が帰ってくるかもしれない』という情報が永田町に流れたのです。こうした北朝鮮からの提案は、被害者家族の耳にも入っている。安倍総理は米韓の顔色をうかがって北朝鮮の提案に乗らない代わりに、被害者家族の心証を悪くしないため、トランプ大統領に会わせたとも言われているのです」(官邸関係者)
しかも不気味なことに、これまで北朝鮮は9月3日に6回目の核実験を強行すると、12日後の15日に中距離弾道ミサイルを発射して以降、軍事的挑発は確認されていない。北朝鮮が「沈黙」を続ける理由について、軍事評論家の潮匡人氏はこう説明する。
「トランプ大統領が日本、韓国、中国を歴訪するタイミングで何らかの行動を起こすと見られていましたが、実際には何もしませんでした。一つの可能性として、行動を起こそうとしたけど、できなかった事情があったと考えられます。6回目の核実験では、大きな規模の爆発で核実験場付近で地滑りが起きて、岩盤がズレてしまった。そのため新たな核実験の強行ができる状況ではなかったのではないでしょうか」
実際、10月下旬には香港紙「サウスチャイナ・モーニングポスト」で、核実験場で再び核実験を実施すれば、山が崩壊し放射性物質が漏れて、取り返しのつかない事態が起きると、中国側が警告していたことも報じられていた。
「それでも『沈黙』しているから、安心はできません。むしろ緊張は高まっているでしょう。北朝鮮の10月28日の『労働新聞』では、『国家核戦力の建設は、すでに最終完成のための目標が全て達成された段階にある』と主張しています。もうこれ以上は軍事的挑発をやる必要がないと受け止めることもできるのです。すでに弾道ミサイルを大量に保有し、その多くは日本を射程に収めている。その独裁国家を目の前にして、日本は何もできないのが実情なのです」(前出・潮氏)
核・ミサイル開発と拉致問題で揺さぶられ続ける日本に、解決の糸口はあるのだろうか。