そこで再燃するのが「第二相撲協会」設立のクーデター構想だ。さる相撲ジャーナリストが明かす。
「貴乃花親方の実父である貴ノ花も、かつて大物力士から八百長を強要された時、許さなかったという逸話があるほど。その覚悟のほどはすごいですよ。貴乃花親方はその父親の遺志を引き継いでいて、ライフワークとして『不正疑惑』の一掃を掲げています。かつて10年の野球賭博問題、11年の八百長問題と不祥事が続きましたが、同時に相撲協会の隠蔽体質が浮き彫りになった。その際に、権勢を誇っていた貴乃花親方がひそかに思案していたのが、第二相撲協会構想です。中でも史上2番目の若さで審判部長を務めていた11年春の技量審査場所では、無気力相撲に目を光らせる一方、放駒理事長(当時)が角界浄化の手綱を緩めたらすぐにでも貴乃花一門を率いて『第二相撲協会』を立ち上げる動きがあったといいます。つまり八百長疑惑が向けられた勢力を一掃して、ガチンコ相撲を標榜する協会に生まれ変わるというプランだったようで、若手親方の賛同も得られると腹づもりもあったようです」
今回の「お断り宣言」も、こうしたことを背景に、事件をウヤムヤにされることを恐れてのものだったのだ。
だが、この「第二相撲協会設立」は放駒理事長の角界浄化の尽力もあり、一度は沈静化。その後、貴乃花親方は、後ろ盾である北の湖親方が理事長を引き継ぐや、相撲協会の悲願だった公益法人化に奔走。14年1月に正式に認可されると、貴乃花親方はコンプライアンス重視と伝統回帰の姿勢を打ち出し、一部では「次期理事長」との声すら上がるようになっていった。ところが、15年12月にガンで闘病中だった北の湖理事長が急逝。その後は徐々に角界で孤立するようになっていったという。
「さらに貴乃花親方と相撲協会の対立に拍車をかけたのが、北の湖理事長の後援会の関係者だったK氏の存在です。K氏は北の湖理事長の死後、僧侶の池口恵観氏の紹介で貴乃花親方のブレーンとなり現在に至っている。16年の理事長選では、貴乃花の金庫番と言われるほどの資金力を誇る一方で、アンチ八角の急先鋒として暗躍しました。これが、今も尾を引いています」(角界関係者)
しかも、今回の騒動が巡業先でのトラブルだっただけに、被害者側の親方とはいえ、貴乃花親方の協会内での立場はますます危ういものになりそうなのだ。
「すでに執行部からも『冬巡業から貴乃花親方を外せ』という声も上がっているほど。さらには、日馬富士の師匠である伊勢ケ浜親方との関係も最悪ですし、貴乃花一派と言われていた阿武松親方や山響親方も距離を置き始めている。もはや孤立無援状態で、来春の理事長選はおろか、理事すら落ちる可能性もあります。たとえ日馬富士を逮捕・引退に追い込んだとしても何もいいことはありませんよ」(スポーツ紙相撲担当記者)
かつては、親方衆の支持を集め、ガチンコ相撲再興を掲げていた貴乃花親方。嫌悪するモンゴル互助会、ひいては相撲協会を敵に回して、「第二相撲協会」設立でしか金星をあげることができないのだろうか。