輝かしい実績を残した本物のスター選手のみが入会を許される「名球会」。日本球界で2安打したあとメジャーに渡り、2000本安打を達成した元広島・ソリアーノの入会問題が持ち上がったが、それと同時にファンを落胆させる「暗部」の存在も浮上。大分裂抗争に発展するドロドロ劇が進行中なのである。
09年12月13日、埼玉県熊谷市の温泉リゾート「ホテルヘリテイジ」で、日本プロ野球名球会の総会が執り行われた。通算2000本安打、200勝、250セーブのいずれかの記録を残した選手が会員資格を持ち、会員28人が出席したこの総会では、副会長だった王貞治氏(73)の新会長就任が全会一致で承認された。
これに先立ち、12月3日には都内で株式会社日本プロ野球名球会の臨時株主総会があり、10月27日付で提出されていた辞任届を受理する形で、金田正一氏(80)の初代会長兼代表取締役の辞任が決まっている。こうして「金田→王」体制への移行はスムーズに行われたかに見えた。
だが、この交代劇の背景には、今も解決していない対立と抗争がある。
トップ交代の翌10年10月、名球会は株式会社から一般社団法人へと法人格を変更。王会長は同時に理事長となった。これを機に、創設者たる金田氏、そして谷沢健一氏(65)が名球会を「退会」し、しばらくして堀内恒夫氏(65)の名前も会員リストから消えた。
「3人が退会していたことは知りませんでした。公式なアナウンスもないし、いつの間に、という感じです」(スポーツライター)
名球会の公式サイトを見ると、確かに3人は会員名簿から削除されている。ところが金田氏は「退会などしていない」と立腹、谷沢氏も「今も会員だ」と主張しているというのだ。矛盾する見解。球界随一のスターOBたちの間で、いったい何が起きているのか。
まず金田氏に話を聞こうと自宅を直撃したが、不在を理由に、対応した家人に用件を聞いてもらえず。そこで個人事務所「カネダ企画」に尋ねると、スタッフが困惑気味に、
「我々はまったく知りません」
と答えるのみ。一方の谷沢氏の対応も不可思議だ。
「名球会は退会しているけど、会員は会員ですよ。2000本、200勝をあげた人が会員じゃないの?」
かねてから名球会では、不透明な経理の問題が取りざたされていた。株式会社時代、事務局はカネダ企画と同じ住所で登記され、
「カネダ企画が名球会の仕事を請け負う窓口でした。野球教室、グッズ販売などの収入もカネダ企画に入る。マスターズリーグでは、億単位になる選手の総年俸のうち何%かを、選手の斡旋料として受け取っていた。その全ての会計が不透明であり、事実上、金田氏の個人商店だった。名球会を私物化していると言われたのです。退会トラブルの一因はこれでしょう」(スポーツ紙デスク)
だが谷沢氏は、問題勃発はむしろ、王新体制への移行後だとほのめかすのだ。
◆アサヒ芸能8/27発売(9/5号)より