テリー でも東京は華やかな場所じゃない。「木綿のハンカチーフ」の逆じゃないけど、「田舎にいる男性のことを忘れていく」っていうことはなかった?
唐橋 それを彼は心配しすぎちゃっていましたね。
テリー 「東京の男に誘われてるんじゃないか。ユミ、今日は何時に帰るんだ?」なんて。
唐橋 だんだんとそんな感じになっていきましたね。私、スティングが好きなんですけど、コンサートの最中に30分おきに電話がかかってきたり。
テリー それは大変だな。
唐橋 電話に出ないとまずいと思って、途中で帰ったんですけど、そういうことがやっぱりつらくなっちゃったんですね。
テリー それで自分から別れを告げたんだ。
唐橋 はい。
テリー どこで?
唐橋 上野の新幹線のホームで。
テリー ますます映画のストーリーみたい。未練はなかったの?
唐橋 それは引きずらないようにしていたんですけど、2~3年前、ほとんど20年ぶりにお会いしたんです。
テリー えっ、まさか偶然出会ったとか?
唐橋 はい。信じられない話なんですが、地下鉄に乗っていたら隣の男性がメモを差し出してきたんです。「唐橋ユミさんですか」って。「ファンの方かな」と思ってパッと見たら、その彼だったんです。どうして同じ車両で、同じ時刻に乗っているんだろうと思って。
テリー 完全に映画のシーンだ。それでどうしたの?
唐橋 一緒に降りて、ビールを1杯だけ飲んで別れて。
テリー 彼は結婚してなかったの?
唐橋 していたみたいです。でも「離婚の話をしてるんだよね」と。
テリー 完全にウソだな。下心のある男は、女性の前でそう言うんだよ。
唐橋 私もその作戦には乗らないぞと思って(笑)。
テリー もし彼が結婚してなかったら、どうだった?
唐橋 いやあ、まったく何もないと思います。
テリー 女性は一度別れるとそういうものかな。大学を卒業して、彼と別れて、そのあとすぐに福島のテレビ局に就職したんですか。
唐橋 いえ、すぐに就職はしませんでした。卒業して、進路に迷った時期があったんですよ。どんな仕事が自分に合っているのかわからなくて、ひたすらアルバイト生活をしていた時期がありました。
テリー どんなバイト?
唐橋 池袋の映画館でモギリをしたり、浅草ビューホテルで配膳したり、巫女さんもやりました。
テリー ご両親を安心させるために、1回だけでも普通の企業に入ろうとは思わなかったの? 周りもどんどん就職していくから、焦るでしょう。
唐橋 焦りもあったんですけど、やっぱりやりたい道がすぐにわからなかったんです。社会勉強じゃないですけど、アルバイトをしながらやりたいことを見つけて、お金は少しずつ稼げばいいと思って。
テリー 見た目と違って意外とたくましいんだね。
唐橋 そこから「圭三塾」というところに入って、そこからアナウンサーの道を考えるようになったんです。
テリー 紅白の司会を何度もやってる名司会者、高橋圭三さんが立ち上げたアナウンス塾ですね。
唐橋 そういう生活をしていたところに、母から電話がかかってきて「福島のテレビ局で募集をしてるみたいだから、応募してみれば」と。