7月16日放送の「報道ステーション」(テレビ朝日系)にて、古舘伊知郎が「芥川賞と本屋大賞」との関係に言及し、話題を呼んでいる。
古館は、「芥川賞と本屋大賞との区分けがだんだんなくなってきた感じがするんですけどね」と語り、芥川賞の選考に疑問を呈するような姿勢を見せたのである。
とりあえず権威には噛みついておく古館節のようだが、そもそも古館自身が“芥川賞と本屋大賞との区分け”について理解できているかどうか、はなはだ疑問である。それゆえ、「ちゃんと『火花』を読んだのか?」という声があがるのではないだろうか。
小説好きには釈迦に説法だが、芥川賞が純文学を対象にした賞なのに対し、本屋大賞は全国の書店員が最も売りたい新刊本に投票するもので、賞の位置づけ自体がまったく異なっている。だから、両者の区分けがなくなるなんてことはそもそも、あり得ないのである。
ここ数年の本屋大賞を見ると、2015年の「鹿の王」はファンタジー、2014年の「村上海賊の娘」は歴史小説、2013年の「海賊とよばれた男」は歴史経済小説であり、いずれも芥川賞では選考対象外のジャンルばかり。過去の1位作品を見ても、ミステリー小説の割合が多く、エンターテイメント性の高い作品が好まれる傾向が見えてくる。
一方で、ピース・又吉直樹の「火花」はれっきとした純文学であり、初出も文藝春秋の「文学界」だ。ここをどう読み解けば、本屋大賞との区分けがなくなってきたことになるのか。まったくもって古館のコメントの意図は、理解不能ではないだろうか。
裏読みすれば、中堅芸人の書いたベストセラー小説が芥川賞を受賞することに、違和感を抱いた可能性もある。だが、アーティストの辻仁成は37歳で芥川賞を受賞しており、現在35歳の又吉とはほぼ同じ年代だ。もしや古館は、辻が受賞した19年前から芥川賞に対して疑問を抱き続けてきたのだろうか。ぜひ、報道ステーションでコメントしてもらいたいものである。
(金田麻有)