今期の夏ドラマで最も話題をさらっている作品3つといえば、月9ドラマの復権を懸けた「恋仲」(フジテレビ系)、人気マンガのドラマ化である「デスノート」(日本テレビ系)、そして消防庁の全面協力を受ける「HEAT」(フジテレビ系)である。
この3作品とも前評判や、放送当初の話題性にはかなり厳しいものがあった。だが回を重ねるにつれ、「恋仲」と「デスノート」は視聴率も回復し、注目を浴びるようになっている。
一方で唯一、「HEAT」だけが世間の悪評を払拭できていない。それどころか、21世紀における史上最低視聴率もマークしてしまい、「恋仲」や「デスノート」との格差は広がるばかりだ。
そんな「HEAT」の不人気に関して、主演を務めるEXILE・AKIRAの責任を問う声は日増しに大きくなっている。だがその見方に異を唱えるのは、ドラマ鑑賞歴30年のテレビ誌ライターだ。
「もちろん、ある程度は演技力も影響しますけど。それよりも視聴者を引き留められるかどうかは、やはり脚本に掛かっています。おもしろいホン(脚本)なら、チャンネルを合わせた視聴者は見続けてくれるんですよ。その点、『恋仲』と『デスノート』は頑張っていますね」
その「恋仲」では登場人物の相関関係を描くのが巧みで、次はどうなるのかと気になってしまう。また「デスノート」では原作に忠実な展開に戻したのが功を奏し、窪田正孝の迫真の演技も相まって、物語そのものを楽しめるようになってきている。
それに対し、どうにも視聴者を引き付けられないのが「HEAT」なのだ。そもそも消防団という設定に視聴者は感情移入しづらいし、画の撮り方も古臭い。登場人物が横に並んで順番にセリフを発していく様は、昼メロや吉本新喜劇を観ているようだ。だが、昼メロのようなドロドロの愛憎劇もなければ、新喜劇のような徹底したお笑いもないため、どこに注目すればいいのかわからないのである。
「何より疑問なのは、火災が発生しない回があることです。これではただの消防団員コスプレじゃないですか。映画『バックドラフト』のように火の恐怖を緻密に描き出せば、手に汗握る緊迫感で視聴者を引き付けられるはず。そのほうが肉体派のAKIRAも魅力を発揮できるはずなのに、なぜお茶を濁しているのかまったく理解できません」(前出・テレビ誌ライター)
火災のシーンはスタジオ内では撮影できず、大規模なロケが必要なのはわかる。だがそんなことは最初からわかりきっていたし、消防庁の全面協力も得ているのに、消防団員が活躍するシーンがなくて大丈夫なのだろうか。自分たちのお尻に火がついている状況なのだから、見事な活躍で火消ししてもらいたいものである。
(金田麻有)