実はこうした状況に、球界のドン、巨人・渡辺恒雄最高顧問(89)は「撤退しかねない球団が出てきたのは歓迎すべきこと」と考えているのだという。球界関係者が語る。
「ナベツネさんの頭の中では、なぜプロ野球人気が低迷し、中継視聴率が下がっているのかというと、チーム数が多くて選手層が薄いから。高いレベルにするためにはチームを減らす、というのが持論なのです。2020年東京五輪でプロ野球が種目として復活するためには、プロ野球を盛り上げる必要もあります」
渡辺氏はかねてから「8~10球団による1リーグ制に移行したい」という願望を持っているとされ、
「ダメなチーム、不人気球団をはじきたい。それが中日、ヤクルト、ロッテ、オリックスなどです。ナベツネさんは近鉄消滅騒動の少し前、1リーグ構想を持ち始めた頃から『不要球団リスト』を作っていた。ただし、他企業に買収されれば球団数は変わらない。でも買収自体を阻止すれば問題ない。だから以前から、球界参入のハードルをもっと高くすべきだ、と発言しています。親会社の収益と資産規模に関する条件を上げ、供託金も引き上げる。観客動員、球場規模の条件もきつくする。すると、落ちていく企業は増えるでしょう。横浜買収騒動時に、10月になって本拠地を変えるなどと、球界のしきたりを無視したことを言いだしてミソをつけたリクシルも排除の対象だと思います」(前出・球界関係者)
昨今の身売り危機球団続出に乗じた球界大再編プランの再浮上である。その背景には、球団経営を圧迫する事情も。
「顕著なのは、交流戦の減少。開始当初は1球団当たり36試合で、パ・リーグ6球団はそれに絡めたイベントやファンサービスで収益を増やしてきた。対してセ・リーグ側は遠征先が増えて出費がかさむなどのデメリットのほうが多く、規模縮小を推し進めました。その結果、現在の18試合となりましたが、これはパにとって大きな痛手となっている」(NPB関係者)
プロ野球界全体の収益伸び悩みのしわ寄せを一手にっている感のあるパ。関係者によると、買い手がいないのなら合併でもいいから身を引きたいと考える球団もあるほどで、事態はそこまで迫っているのだ。関東のさる球団関係者も言う。
「こうした収益構造を改善させ、プロ野球人気を回復させるためにも、将来的には1リーグ制がいい。結局、なんだかんだいって今も巨人中心なんです。2リーグでは人気の偏りが解消されません。だから1リーグ制の総当たりにして、巨人、セの人気球団を利用する。ソフトバンクが今、圧倒的な強さを誇り、人気もあります。しかし野球の存続を語るうえで、中心は巨人。ソフトバンク中心の球界になることはありえない。スター選手はだいたいパにいますが、パ球団同士の戦いで観客動員がどれだけ伸びるでしょうか。西武、ロッテ‥‥あそこまで誰がわざわざ試合を見に行きます? 阪神や巨人と対戦するからこそいろんな人が来るというのが現実なんです」
ロッテで勃発した兄弟対立は単なるお家騒動では収まらず、球界大再編という大激震の引き金になるかもしれないのだ。