両国国技館のこけら落としとなった85年の初場所、大横綱はあっさりと引退。優勝24回の功績に対して、一代年寄が贈られた。96年に相撲協会の理事となり、02年からは理事長を務めるが、協会トップとしての実績は乏しいと言わざるをえないのが実情だった。
「名力士、名伯楽ならず。理事長としての北の湖は相撲協会の象徴であり、重石として存在していました」(やくみつる氏)
その重石が消えた今、空白となった理事長職は、協会NO2の八角親方(52)=元横綱・北勝海=が代行。九州場所千秋楽の挨拶も、八角親方が「代読」した。
「実は北の湖理事長は亡くなる前、『遺言』のような形で、周囲に『次は八角だ』と言い残していた。親方衆にはそれを尊重しようという空気もあり、本来なら八角親方が昇進するはずです。ところが、肝心の北の湖理事長周辺から『造反者』が出ているんですよ。そこで、八角親方の有力対抗馬として台頭してきているのが、貴乃花親方(43)=元横綱・貴乃花=なのです」(相撲協会関係者)
次期理事長の座を巡って元横綱同士が、がっぷり四つの様相を呈しているのである。
新理事長は12月18日に開かれる定例理事会で、理事の互選によって選出されることになっている。任期は北の湖理事長の残りの来年3月までで、4月以降の理事長は来年初場所後の理事選で改選された理事による互選で決まる。ちなみに現在の理事は、次のような構成になっている。
八角事業部長(高砂一門)、貴乃花総合企画部長(貴乃花一門)、鏡山大阪場所部長(元関脇・多賀竜/時津風一門)、千賀ノ浦名古屋場所部長(元関脇・舛田山/出羽海一門)、尾車巡業部長(元大関・琴風/二所ノ関一門)、伊勢ヶ浜審判部長(元横綱・旭富士/立浪・伊勢ヶ浜連合)、二所ノ関福岡場所部長(元大関・若嶋津/二所ノ関一門)、友綱教習所所長(元関脇・魁輝/立浪・伊勢ヶ浜連合)、出来山広報部長(元関脇・出羽の花/出羽海一門)。
6つの派閥で分け合っていることがわかるのだ。ベテラン相撲記者が言う。
「北の湖理事長をかわいがった春日野元理事長は政財界に多様な人材を持っていましたが、北の湖理事長はこれといったパイプがなかった。そのため、Kという人物をブレーンとして連れてくることになりました」
北の湖理事長の最側近とされるK氏は現在、相撲協会顧問の職にあり、協会内で力を持っている。