プロ野球界の「オフの戦い」といえば、契約更改である。あの手この手を繰り出して高給を手にしようと交渉に挑む選手たちに、査定という武器で応戦する球団フロントのバトル。時にペナントレースよりおもしろく、怒号と爆笑が渦巻く人間模様の宝庫なのだ。
このオフ、球界最高年俸選手に躍り出たのは、去就に悩んでいた広島・黒田博樹(40)だった。2億円アップの6億円で1年契約を結んだのである。
「広島には5億円を出せずに黒田をメジャーに放出した苦い過去がありますが、15年は黒田の凱旋効果でチケット、グッズなどの売り上げが大幅アップ。6億円を払っても黒字となります。黒田のおかげで儲かって黒田に還元するのは当たり前の話で、むしろ安いくらいでしょう」(広島のメディア関係者)
一方、巨人の杉内俊哉(35)が、4億5000万円減という過去最大の大減俸を飲むなど、大幅ダウン組も目立った。NPB関係者が言う。
「杉内は股関節の手術を受け、復帰が夏以降になるかもしれない。本人が申し出ての大減俸となりましたが、問題は昨年の5億円という年俸にかかる今年の税金。高額所得者の所得税率が45%にアップすることもあり、恐らく経費を差し引いて2億円くらいにはなるでしょうが、大変ですよ。元中日、横浜の種田仁(44)のように、税金が払えず借金生活に追い込まれた選手も少なくないですから」
信賞必罰を徹底したのが日本ハムである。投手3冠の大谷翔平(21)、抑えの増井浩俊(31)をそれぞれポンと1億円アップさせたが、15年、わずか3勝2敗に終わった左腕の武田勝(37)は7000万円ダウンの4000万円、15年一軍登板なしの武田久(37)は6200万円ダウンの1800万円と、限度額を超えての減俸となった。ここまでアップ、ダウンの差が激しい理由には、12球団一と言われる最新鋭のコンピュータ査定システムがある。球団関係者が明かす。
「査定担当者が全試合に帯同して細かくチェックし、結果だけでなく右打ちなどのチーム打撃も考慮しながらポイントをつけていくのがほとんどの球団の査定方法。しかし、日本ハムは最新の独自ソフトを使い、あらゆるデータをコンピュータで査定しています。チーム成績などは係数にして反映させている。文句のつけどころのない数字がはじき出されるので、交渉しようにも隙がないんですよ」
また、楽天の松井裕樹(20)が4000万円増の6500万円、DeNAの新人・山崎康晃(23)も3500万円増の5000万円を勝ち取るなど、最下位でありながらストッパーが高評価されたのも、昨今の契約更改トレンド。負担の激しいストッパーの勤続年齢が
短いことや、いずれもチーム事情で先発から抑えに転向させられたことも配慮された結果である。