元祖アイドル女優だった榊原るみ(65)は、あの「男はつらいよ」でも最年少のマドンナに選ばれた。数々の名作ドラマも含め、70年代の思い出を語った。
──寅さんの話にいく前に、当時の少年たちに忘れられないのは「帰ってきたウルトラマン」(71年、TBS系)ですね。
榊原 そう、シリーズで初めて隊員ではなく、主人公と恋心を交わすアキという女性の役でしたね。
──ところが最終回を待たずして、怪獣に襲撃されて絶命するという衝撃の展開。
榊原 正直に言いますと、石立鉄男さん主演の「気になる嫁さん」(71年、日本テレビ系)でヒロインのオファーがきたんです。ウルトラマンも大事な役だけど、出番は「~嫁さん」のほうが多く、事務所が途中降板を申し出ました。
──とはいえ、何も怪獣に虐殺させなくても‥‥。
榊原 スタッフもヤケになったんでしょうか(笑)。ただ、最近になって「悲劇的なエピソード」と評価されているみたいですね。
──人生が激変したような71年、ここに「男はつらいよ 奮闘篇」(松竹)も加わりますね。20歳でマドンナ役というのは、当時の最年少でした。
榊原 それまで若尾文子さんなど大女優の方が続いていたので、私みたいな新人クラスは初めて。
──緊張しましたか?
榊原 それが逆なんです。山田洋次監督の現場は、テランの女優さんがカチカチになるほど。私は子供すぎたのか、何にも気にせずのびのびとやらせてもらいました。タコ社長役の太宰久雄さんに「あんた、恵まれてるねえ」って言われました。こんなうまい人たちと芝居ができるんだからって。そのことが実感できたのは、うんとあとになってからですよ。
──うまい人たちの筆頭が、もちろん寅さんこと渥美清だったと思います。
榊原 徹底していらっしゃいましたね。撮影が始まると撮影所の近くのホテルを借りて、終わるまでご自宅に戻らない。家に帰ると里心がついてダメなんだそうです。
──マドンナとして接してみてどうでした?
榊原 ふだんの渥美さんは無口なジェントルマンで、あの寅さんとは真逆の人でしたよ(笑)。ああいう役者さんって、今はいなくなっちゃったなあと思いますね。
──さて私生活では、映画監督のすずきじゅんいち氏と再婚し、ロスの生活を経て、2年前に帰国。同時に女優にも復帰しました。
榊原 年齢的に再婚という形は取らずにおこうと夫と話していたんですけど、ロスでグリーンカードを取得するためには入籍の必要がありましたもので。
──同居する娘さんは、かつて「3年B組金八先生」(TBS系)でデビューした女優の松下恵。ちなみに、まだ独身?
榊原 そうなんです、30代も半ばだから、そろそろ結婚してほしいんですけど「ママだって1度は失敗したじゃない!」って(笑)。
──母親似の美人ですから、今からでも遅くはないですよ。さて、70年代には岡崎友紀や吉沢京子といったドラマ主体のアイドル女優が多かったですね。
榊原 友紀ちゃん! 京子ちゃん! どこかで同窓会のようにお会いしたいですね!