就任から1カ月、新都知事がいきなり「大仕事」に着手した。土壇場になって、築地市場の移転延期を発表したのだ。多額の税金を投じて建設した新市場はどうなるのか──。なんと水面下では「カジノ場に改修」なる驚天のウルトラCが急浮上していたのである。
「全ての資産、能力をつぎ込んだ。いまさら『ちょっと待った』と言われても、どうすればいいのか‥‥」
片や怒気をはらんだ口調で困惑すれば、
「11月は繁忙期なので、延期が決まってホッとした」
と歓迎の声も──。
8月31日、小池百合子都知事(64)が築地市場(中央区)を豊洲(江東区)に移転する計画を延期すると発表したことで、市場の移転賛成派と反対派双方からは、真っ二つに割れた本音が飛び出した。
小池氏は11月7日の移転予定を土壇場で延期した理由について「安全性への懸念」「巨額で不透明な費用の増大」「情報公開の不足」の3つをあげている。
豊洲市場は東京ガスの工場跡地に建設。だが、敷地内から環境基準の約4万3000倍の有害化学物質・ベンゼンが検出されるなど、土壌や地下水に含まれる汚染物質の懸念が増大した。都は土壌汚染対策を進め、14年11月から地下水のモニタリング調査を実施。その最終結果が発表される来年1月中旬を待たずして移転が決まっていることに、小池氏は不快感をあらわにしたのだった。
会見では、膨らんだ移転費用にも言及。総費用は3926億円から5884億円にハネ上がり、特に建設費は11年時点の990億円から16年は2752億円と、当初の計画から約3倍にまで膨張していることを問題視した。
すでに築地市場の跡地には、20年・東京五輪に向けて選手村が建設される臨海部と都心部を結ぶ環状2号線が開通予定だが、移転延期で完成が間に合わないおそれも出てきた。それでも延期に踏み切った小池氏について、東京新聞編集委員の五味洋治氏はこう語る。
「選挙中に掲げた『都民ファースト』の公約を守るため、移転延期を実践することで、『NOと言える都知事』の姿をアピールする狙いがあったのでしょう」
会見で小池氏は延期期間を明言せず、「移転中止」の可能性を問われても明確に否定しなかった。記者会見後、ある閣僚は官邸担当記者にこう漏らしている。
「小池さんは目立ちたがりで、移転延期による補償問題を考えていない。都議会との対立が深まって、立ち往生するのではないか」
未使用の豊洲市場の維持費が1日当たり700万円かかるなどと、延期によって発生する損害額が懸念される中、移転問題を取材するジャーナリストはこんな情報を耳打ちした。
「実は移転中止の先には、豊洲をカジノにする計画が持ち上がっているのです」
そもそもカジノ誘致は99年に石原慎太郎都知事時代にスタートした「お台場カジノ構想」が出発点。安倍晋三総理(61)もカジノを含む「統合型リゾート施設(IR)」建設を成長戦略に盛り込んでいる。
「これまでも『カジノ解禁』に向けて国会に法案が提出されてきましたが、民主党(当時)や公明党からギャンブル依存症の増加を心配する声が上がり、成立しませんでした」(前出・ジャーナリスト)