こうした「部屋崩壊」とも言える惨状に、
「西岩親方は将来、部屋を持つつもりで、すでに建築中なんですが、稀勢の里を連れて出ることも考えているようです。まぁ現実的には難しいでしょうが、それほどの状態にあるということです」(相撲関係者)
当然ながら、指導力ゼロの師匠の下では、稀勢の里の相撲そのものが荒れるのは当然で、解説者の北の富士氏をはじめとする好角家もしばしば、「稀勢の里は四股を踏まなくなった」「四股が足りない」と指摘している。相撲担当記者も、こう言って嘆くのだ。
「そうするとね、連合稽古の時だけ、田子ノ浦親方は上がり座敷から『四股を踏め』と声を飛ばす。本当に調子のいい人ですよ。でも、ふだんの稽古ではそんなことは何も言わないし、言ったところで稀勢の里は田子ノ浦親方をバカにしていますから『十分やっている』と突っぱねて、耳を貸しません」
ある意味、稀勢の里自身にも問題はあると言えるが、中澤氏は、
「今のままでは横綱昇進なんてできっこない」
と悲観的だ。さらに続けて言う。
「中には『師匠を代えたらどうだ』という声もありますが、相撲界では弟子が親方を選び直すことはできないんですよ」
現在の日本人力士の中では圧倒的に強い稀勢の里にとって、これは悲劇と言うほかない。昨年、3度の綱取り全てに失敗したのもしかたがないことなのか‥‥。
「師匠と部屋の名前が変わって出直した時から、稀勢の里の胸を孤独感が占めてきているのではないか」
杉山氏はそう言って、稀勢の里を思いやる。
「生真面目でいちずな性格。おまけに、酒を飲んで発散するタイプではない。しかし、そんなことを言っている場合ではない。ここは自分と向き合い、横綱になるという目標に向かって頑張ってほしい。気持ちを大きく持って周囲を気にせず、まっすぐ進むことです」
昨年12月18日、横審の稽古総見が行われた。稀勢の里は3人の横綱から1勝ずつ上げる5勝3敗で終わり、場所前の調整で調子を上げていくことを誓った。
初場所前、部屋から外出する稀勢の里を直撃した。
「大関、相撲協会審判部や横審の委員たちは、初場所で高いレベルの優勝をすれば、横綱に昇進する可能性ありと言っています」
記者がそう投げかけると、正装して4WD車に乗り込んだ稀勢の里は後部座席の窓を開け、こう答えていたものだ。
「ハ~イ。頑張りまぁ~す」
まるで他人事のような、冷めきった声だった。元力士は言う。
「横綱が1人誕生すると、相撲協会からその部屋に支給される弟子の養成費がアップする。だけど、こんなバカな師匠の懐を潤わせてもしょうがない‥‥稀勢の里はそう思ってヤル気が起きないのかもしれませんね」
やはり悲劇は続きそうなのである。