平成25年初場所4日目。大関陣が総崩れし、日馬富士が横綱に昇進できて稀勢の里ができないのはなぜかという話題になった。この日の正面解説、舞の海秀平氏はこう言い放っている。
「日馬富士と稀勢の里の差は、師匠の差ですかね」
この発言は非常に意味深なのだ。元NHKアナで相撲ジャーナリストの杉山邦博氏が言う。
「稀勢の里は入門以来100%、先代鳴戸親方を信じ切って精進してきた。今も親方に指導されたことが、頭の中を大きく占めています。先代が亡くなったことが、稀勢の里が周囲の期待に応えきれない状況が続く事態に少なからず影響している。稀勢の里は、日本人力士の中では横綱になれる最右翼です。もし先代が存命なら、間違いなく横綱になっているはずですよ」
記者もかつて、鳴戸部屋の朝稽古を見たことがあるが、とにかく先代親方は熱心。熱が入るあまり、上がり座敷から身を乗り出してしゃべりだすこともしばしばだった。相撲担当記者も、
「先代鳴戸親方は話好きで、時代劇を引き合いに出して、弟子に説教する。その間、稽古が中断して体が冷えるのはちょっと問題だと思いましたが、現在の田子ノ浦親方は稽古中、弟子たちの前で『俺はAV女優と友達だ』などと自慢話を始めると聞きました。先代の話好きをマネたんでしょうが、中身が中身だから、親方の人間性が出てしまいますよね」
元力士も、アキレながらこんな話を聞かせてくれた。
「弟子たちが稽古中に、田子ノ浦親方は風俗専門誌をパラパラとめくっては読みふけり、オネエちゃんのチェックをしているんですよ。弟子はそんな親方を冷ややかな目で見ています」
それだけではない。
「先代鳴戸親方はみずから調理場に立ち、チャンコを作っていました。力士の健康を考えて作った呉汁なんて最高でしたよ。他にも、蕎麦やうどんも自分で打ち、弟子に食べさせたといいます。ところが今の田子ノ浦親方ときたら、考えるのは弟子が何を食うかより、経費の節減ばかり。田子ノ浦株を買った際の借金でけっこう苦しいみたいですからね」(相撲関係者)
だからなのか、田子ノ浦部屋では稀勢の里、高安(26)が巡業に出かけている間はチャンコを作らず、夫人の手料理を食べていることがあるという。
「そもそも『なりたくない』という本人を説き伏せて田子ノ浦親方になってもらったせいで、万事がこの調子なんですよ。本当にヤル気がないし、指導力はゼロと言っていい。だから西岩親方とはことごとく対立しています」(前出・相撲関係者)
冒頭の、西岩親方の自宅で稀勢の里がチャンコを食べるシーンは、田子ノ浦親方を嫌い、西岩親方に懐いている姿を象徴するものなのだ。