プロ野球のセ・リーグ4球団がペナントレース終盤で白熱の「CS争奪戦」を繰り広げている。それでも舞台裏では、渦中の球団が難題を抱え込んでいるのも事実だ。スポーツ紙が書けないベンチ裏バトルを一挙公開しよう。
5月から6月にかけて球団史上ワーストの13連敗を喫し、奈落に落ちたかと思われた巨人が、怒濤の巻き返しを見せ、息を吹き返している。7月12日の前半戦最終戦からマギー(34)を「2番・二塁」としてスタメン起用した超攻撃的布陣が功を奏し、何とかAクラス争いに食い込む位置にまで挽回してきた。ふだんは感情をほとんど表に出さない高橋由伸監督(42)も手応えを感じているのだろう。3位の座を奪いたいDeNAについて「一気に追いつき、追い越したい」と珍しく闘志を剥き出しにしている。
鼻息を荒らげる指揮官からは相当の覚悟が見え隠れするが、実は今季Bクラスで終了した場合、高橋監督がフロントに「進退伺」を提出するとささやかれているのだ。球団関係者が明かす。
「チームが13連敗を喫した6月8日の西武戦終了後、監督が悲壮感を漂わせることもなく妙にサバサバした表情を見せて、メディアの取材に応じたんです。どうやら、屈辱の敗戦で『今年Bクラスだったら責任を取る』と腹をくくったらしい。実際に村田真一ヘッドコーチ(53)に対して、『もういいですね』と漏らしていたといいます。『進退伺』とはいっても、監督本人の決意は固く、フロントに慰留されても辞めるつもりで、事実上の『辞表』です。Aクラス入りに向け、これまでになくすさまじいほどの執念を燃やしているのは、進退を賭けた“最後の戦い”だからでしょう」
仮に巨人が3位の座を逃せば、実に11年ぶりのBクラス転落となり、07年のCS導入以来、初めてポストシーズン進出を果たせないことになる。高橋監督は歴史的な大型連敗に続き、不名誉な記録を残す形となってしまうのだ。
「もともと由伸は、15年オフに球団から最初のオファーがあった時点で監督就任にまったく乗り気ではなかった。13連敗にBクラス転落となれば屈辱ものですが、辞める理由としては好都合です。しかし、現役続行に固執していた由伸を半ば強引な形で監督に就任させた球団にとって、3年契約の2年目で退任となっては旗色が悪い」(別の球団関係者)
というのも、こうした経緯がある中で任期満了を前に辞任となれば、球団どころか親会社の読売新聞グループ本社全体のイメージが悪化し、G党を含め世間から猛反発を食らうのを危惧しているという。球団内ではすでに「かつてウチの幹部が第一次政権の長嶋茂雄監督を解任して、読売新聞の不買運動が起きたが、あの時と同様の反発が由伸の今オフ辞任によって起きてしまう危険性がある」との声が出ているほど。だからこそ「何が何でも3位には入ってもらい、由伸体制を続投させたい」というのが、巨人フロントの総意なのだ。
だが、そのCS進出の鍵を握る主力の不穏な動きも漏れ伝わってきている。主戦外国人投手のマイコラス(29)とマシソン(33)の2人に、来季メジャー復帰話が舞い込んできているというのである。
「マイコラスのメジャー復帰志向は以前からささやかれていましたが、マシソンまでが『ダディ、メジャーで投げないの?』と息子から聞かれて、その気になっているんです。実際、今季で契約が切れる両右腕を欲しがっているメジャー球団は多い。マイコラスには古巣のテキサス・レンジャーズ、マシソンには母国・カナダをホームとするトロント・ブルージェイズが熱心に水面下で獲得調査を進めています」(メジャー関係者)
CS出場へ向けて両投手が大活躍すればするほど、メジャーの市場価値もますます跳ね上がるだけに、巨人としては心中複雑な思いだろう。仮に2人が今オフにそろって退団すれば、来季の大幅な投手力ダウンは目に見えている。そのうえ、後半の追い上げを考えれば、阿部慎之助(38)、村田修一(36)、マギーといった顔ぶれを来季も外すわけにはいかなくなり、世代交代もままならない。まして今季のように、森福允彦(31)、吉川光夫(29)、そして山口俊(30)といったやみくもな補強をしてもアテにはならない。
高橋監督はたとえCS進出にこぎつけたとしても、悩みの種は尽きないのだ。