秋場所では優勝したものの、この阿武咲に金星を献上したのが日馬富士(33)だ。先の激戦の疲れはまだ取れていないようで、
「全身に疲労がたまり、巡業では稽古らしい稽古ができていません。本人には『次の初場所で‥‥』という気持ちがあるかもしれませんが、連覇は難しいのでは」(相撲関係者)
実際、13年の初場所で横綱に昇進して以降、連覇は一度もない。
「昨年手術した肘のケアもある。もう満身創痍ですよ。ただ、チャンスが巡ってきた時の執念、集中力は日本人力士とは違う。あと1回の優勝で、名力士の一つの基準とされる10回に手が届くので、ノーマークとはいかないでしょう」(銅谷氏)
さて、四横綱の中で崖っぷちの戦いを強いられるのが鶴竜(32)だ。今年は春場所を除いて、全ての場所で休場している。師匠の井筒親方は報道陣を前に、
「次に土俵に上がっても勝てなければ、潔く決断しなければならない」
と引退を示唆、当の鶴竜も悲壮な覚悟で稽古に臨んでいた。
「もし九州場所でも本来の相撲が取れなければ、横審も黙っていない。今場所に『進退をかける』と意気込んでいるとおり、状態は万全。体の張りも動きも綱取りの全盛期と遜色ありません」(相撲関係者)
その裏には、九州で結果を出さなければならない理由があった。
「鶴竜としては、東京にいる後援者のこともあって、『九州を最後の場所にするわけにはいかない』という思いがある。滑り出しからふだんどおりの相撲ができればいいのですが、力みは禁物。緊張で硬くなって負けがつくと、一気に崩れる可能性があります」(前出・相撲関係者)
稀勢の里と同様、序盤でぶつかる若手力士との対戦が明暗を分けそうだ。
「貴景勝(21)と阿武咲との一番がヤマ場になりそうです。2人とも気が強いですからね。鶴竜が弱気になって引いてしまえば思うツボです」(相撲担当記者)
四横綱をおびやかす存在は他にもいる。
「このところの安定した成績といい、若手の中では上位に定着した関脇の御嶽海(24)が優勝争いに絡む活躍を見せるかもしれない」(前出・銅谷氏)
相撲ジャーナリストの杉山邦博氏が言う。
「ケガで万全でない稀勢の里や本調子でないモンゴル人横綱に加え、若手の台頭もあって、今場所は誰が優勝するか予想しづらい状況です」
四横綱が意地を見せるか、若手にとって下克上となるか。次代を占う重要な場所になりそうだ。