日本に犯罪があるかぎり、一流の映画人たちもまた、いかに映像で昇華するかを真剣に考える。こうして生まれた傑作群を、最後に総まくりで一気見せ!
流行語にもなった「火宅の人」(86年、東映)は、放浪の作家・檀一雄の自伝的長編小説の映画化だ。女優(原田美枝子)と家を飛び出すなど、自身の体験をもとに展開する。檀の遺族が映像化に反対したことでもわかるように、愛に関する描写はなまめかしい。
そして女優と別れ、後半は旅先で知り合った陽子との関係が中心になる。演じた松坂慶子(65)は当時33歳の女盛り。カラミを演じた映画は少なくないが、本作での松坂こそ、最もしなやかな肢体が堪能できる。
戦後間もない頃、東大生が起業した闇金融によって被害者が続出した「光クラブ事件」は、首謀者の青酸カリ服毒自殺によって幕を閉じた。
この事件をベースに、高木彬光原作の「白昼の死角」(79年、東映)では意外な女優が脱いでいる。スポーツウーマンで知られる丘みつ子(69)。丘は事件の首謀者である山崎(夏八木勲)の事務員から、のちに妻となる。夏八木との濡れ場では、色白で豊満な乳房がはっきり映し出される。短い時間ではあるが、貴重なシーンであろう。
猟奇的な犯罪として日本中を震え上がらせたのは、79年1月26日に起きた「三菱銀行人質事件」である。大阪・北畠支店に押し入った梅川昭美は、猟銃を手に客と行員合わせて30人以上を人質に取る。
梅川は警官2人、行員2人を射殺し、女子行員を全裸にしてバリケード代わりに並ばせた。事件は2日後の1月28日、特殊部隊の突入と梅川の射殺によって幕を閉じた。
この事件の一部始終を映画化したのが「TATTOO〈刺青〉あり」(82年、ATG)で、梅川にあたる竹田明夫には宇崎竜童が扮した。
ヒロインは関根恵子(62)=現・高橋惠子=で、本作の監督である高橋伴明と結婚する契機にもなった。関根は竹田の情婦であるホステスを演じ、サディスティックな竹田との荒々しい濡れ場を体当たり熱演。
この情婦は、実は山口組三代目・田岡一雄組長を狙撃して惨殺された鳴海清の愛人でもあった。高橋は、その記事を見たことが映画化の着想だったと明かしている。まさしく「事実」がもたらすドラマチックな題材であったと言えよう。
さて、事件ではないが、渋谷のストリップの老舗「道頓堀劇場」の創業者だった矢野浩祐の自伝をもとにした「でべそ」(96年、マクザム)も味わい深い。矢野をモデルにした矢部浩太に片岡鶴太郎が扮し、ストリップ小屋の座長になり、奮闘する姿を描く。
ここで花形ストリッパーを演じたのが川上麻衣子(51)で、その演技は映画界の伝説になった。まず、岩風呂で鶴太郎にフェラをしてからのファックシーン。さらに圧巻は、3分以上にも及んだ「天狗オナニーショー」である。天狗のお面の隆々とした鼻を口に含み、陶然とした表情で股間にゆっくりと挿入。
顔が紅潮して、腰がガクンガクンと揺れながら、頂上を迎える。あまりのエクスタシーの表情に「本当に入れたのでは?」とささやかれたが、川上いわく「さすがにそれはない」とのこと。逆に言えば、いかに演技力が高いかの証明であろう。
続いて、70年代にグラマラスな女優として、さらに作家として注目された鈴木いづみにまつわる騒動を。鈴木はサックス奏者の阿部薫と73年に結婚したが、78年に阿部が急死。その影響もあり、体調を崩した鈴木は36歳で首つり自殺により命を絶ってしまう。
そんな鈴木と阿部の日々を実名で描いた「エンドレス・ワルツ」(稲葉真弓・著)が出版されると、鈴木の16歳の長女がプライバシー侵害と名誉棄損で民事提訴した。
さらに「エンドレス・ワルツ」(95年、松竹)は映画化され、鈴木の役を広田レオナ(54)が演じる。広田と、夫である阿部(町田康)とのセックスライフが何度も濃厚に描かれるが、目を引くのは広田のロケット乳である。正常位、対面座位、騎乗位、立位など、いずれも爆乳を揺らしながら、汗が飛び散る迫力で演じきった。
そして近年、実在の事件を次々と映画化し、奔放な濡れ場を見せてくれるのが園子温監督。園が知り合った「盗撮のプロ」の実話をもとにした「愛のむきだし」(09年、ファントム・フィルム)は、満島ひかり(31)のオナニーシーンが高く評価された。
93年の埼玉愛犬家連続殺人事件をベースにした「冷たい熱帯魚」(10年、日活)では、のちに妻となる神楽坂恵(36)のIカップヌードに視線が集中。
さらに、97年に渋谷で起きた東電OL殺人事件をモチーフにした「恋の罪」(11年、日活)でも、女刑事役の水野美紀(43)に、ヘアまでさらす初ヌードを披露させている。
最後は、真木よう子(35)主演で数々の映画賞に輝いた「さよなら渓谷」(13年、ファントム・フィルム)だ。本作は、大学生による集団レイプ事件と、06年の秋田児童連続殺害事件を組み合わせている。
真木はフルヌードではないものの、西日が当たる部屋で、肉感的なボディを駆使しての濃厚なベッドシーンを演じている。まるで匂いまで伝わってきそうな、実にリアルなカラミであった。