史上最年少のプロ入り、デビューから29連勝と数々の記録を塗り替えてきた天才少年が「初優勝」を目指す。立ちはだかるのは昨年、史上初の「永世七冠」を達成した羽生善治。キャリアと経験でヒケを取る藤井五段は、王者にどう立ち向かうのか。2人をよく知る男が大金星へのV秘策を明かした。
最高価格のSS席9800円を含む584席分の観戦切符が即日完売──。2月17日に行われる“世紀の対局”(東京・有楽町朝日ホール)がプラチナチケットと化し、注目度の高さをあらためて世に知らしめた。
対戦するのは、空前絶後の「永世七冠」を達成し、国民栄誉賞を授与されたばかりの天才棋士と、14歳で将棋界の最多29連勝記録を作った天才ルーキー。羽生善治竜王(47)と藤井聡太五段(15)の対局である。
この公式戦初対決は、将棋史に残る重要な一戦になるのはもちろん、藤井五段の傑出した実力を物語っているという。
「全ての棋士にとって、羽生戦は特別。一度も対戦できないまま引退する棋士が全体の2~3割いると言われているぐらいで、当たることすらなかなか簡単にはかないません」
こう語るのは、「羽生善治 夢と、自信と。」(学習研究社)の著書がある将棋記者の椎名龍一氏。竜王戦や棋聖戦といった大会でタイトルホルダーの羽生竜王と相まみえるには、挑戦者決定戦を勝ち抜いて、その高みまで昇り詰めなければならないからだ。
今回、藤井五段は「朝日杯将棋オープン戦」のトーナメントを勝ち進み、準々決勝で佐藤天彦名人(30)を破ったことで、次戦の準決勝で羽生竜王と激突することになったのである。
「早晩、羽生対藤井のカードは実現すると思ってはいましたが、予想以上に早かった。それは藤井さんが驚異的に強いせい。競走馬でいえば、新馬なのに他の馬より常に10秒は速いくらい強い。ハンパない新人です」(前出・椎名氏)
藤井五段は16年秋にプロデビューした若武者。公式戦優勝143回を誇る重鎮との一騎打ちに世間は沸騰している。
藤井五段は「羽生打倒」を果たせるのか。
「藤井聡太 天才はいかに生まれたか」(NHK出版新書)の著書を持つフリーライター・松本博文氏は、「藤井五段が勝つ確率はズバリ4割」と断言したうえで、その根拠を明かす。
「朝日杯将棋オープン戦は持ち時間が各40分という早指し戦。一般的に持ち時間が短いほうが、若手にとって有利と言われています。短時間で手を読みきる“瞬発力”では、やはり若手に分がありますからね」