元おニャン子クラブで女優の生稲晃子が、乳ガン患者であるとカミングアウト。多くの乳ガン患者から称賛の声があがっている。生稲は2011年に乳ガンを患い、患部を摘出。乳房を残す温存治療を選択したが、翌年夏と翌々年秋に相次いで再発し、2013年末には右乳房の全摘手術を受けていた。そして今年10月に乳房再建手術を受けたという。
そんな闘病生活を送りながら生稲は、「ちい散歩」、および後継番組の「若大将のゆうゆう散歩」(テレビ朝日系)にてレギュラー出演を続けていた。そして今年9月の番組終了を機に、今回の乳ガン公表に至ったという。そんな生稲の闘病生活について、乳ガン患者との交流が深い医療系ライターが解説する。
「生稲さんが最初に選んだ温存治療は放射線治療とセットとなっており、放射線を照射すると皮膚が硬くなるので、その後の再建手術は難しくなります。乳房再建ではエキスパンダーという器具を挿入して内側から皮膚を伸ばしていきますが、生稲さんのケースでは相当な痛みを伴うはずです」
その眠れないほどの痛みのため、乳房再建中の患者には睡眠薬が手放せない人も少なくない。また乳ガンでは手術した側の腕を上げる動作も難しくなるので、生稲は番組収録では四十肩だと言ってゴマかしていたのだという。
「家事はもちろん、服を着るのにも苦労するほどの痛みを隠し通してきた生稲さんの強い心には、本当に胸を打たれます。乳ガン患者の間でもさっそく、大きな話題になっていますね」(前出・医療系ライター)
そんな生稲の告白は、治療中でも普通の生活を続けられることを示した点で、大きな意味があったと言える。闘病中の乳ガン患者に勇気を与えたのはもちろん、これから手術を受ける患者にも大きな希望を与えたと、医療系ライターが解説する。
「乳房再建に保険が適用できるようになり、全摘しての再建を選ぶケースが増えています。それでも患部のみを切除する温存治療を選ぶ人が多いのもまた事実。しかし病院では、温存治療を選んだ場合のリスクを丁寧に教えてくれないところも少なくありません。それゆえ生稲さんのケースが公表されたことで、多くの女性が乳ガンに関する知識を得ることができたと言えるでしょう」
温存治療であっても全摘であっても、正しい知識を得ることは何より重要だ。医療系ライターが昨今の状況に警鐘を鳴らす。
「切除後の傷口が痛々しいとか、抗がん剤で顔がパンパンになるといった情報がいらないとは言いませんが、患者が本当に必要としているのはどんな治療法を選択すべきかということ。ネットや書籍での情報収集に加えて、患者同士の交流会や乳ガン学会の患者セミナーなどに参加することにより、最新の情報に接することができます」
一昨年の全摘手術以降は体調が安定しているという生稲。今回の告白で精神的に楽になったとのだという。多くの乳ガン患者も生稲のように、平静な気持ちになれることを祈りたい。
(白根麻子)