映画やドラマだけではない。本来は放送禁止と無縁のはずのバラエティやドキュメンタリー、音楽番組にも「タブー」は存在する。
「三重県から来てくれた高校2年の○○君、何をやってくれるのかな?」
土居まさるの軽妙な司会に、学生帽をかぶった少年はおずおずと口を開く。
「はい、ゴキブリを食べてみたいと思います」
これが71年から82年まで続いた番組「TVジョッキー」(日本テレビ系)の伝説の場面である。毎週日曜の午後1時、ランチタイムに生放送で届けられたのは、ゴキブリやネズミを食らう少年、何十匹のヘビとともに水槽に入る少年など、今なら企画の段階でアウトに。
ゴキブリはまだしも、生きた白ネズミを腹から食らいついた瞬間は、アシスタントの相本久美子やゲストの歌手たちが一斉に悲鳴をあげた。そんな番組は確かに存在した、あなたが信じようと信じまいと‥‥。
山城新伍が司会を務めた「独占! 男の時間」(75~77年、テレビ東京系)は、壮絶なラストを飾った。レギュラーの笑福亭鶴瓶がカメラに自分の肛門を押しつけ、山城は局の上層部を番組内で名指しして批判。
2人そろって、長らくテレビ東京を出入り禁止の処分となっている。
今でこそ一般化した「やらせ」という言葉が、最初に問題視されたのが「アフタヌーンショー」(65~85年、テレビ朝日系)だ。85年8月20日にオンエアされた「女子中学生のリンチ場面」が、実はやらせであったことが発覚。
司会の川崎敬三は怒りをあらわにし、番組の終了だけでなく、局の存亡すら揺るがす一大事に発展した。
これとは逆に、正直すぎる発言が終止符を招いたのが「カミングダウト」(04~05年、日本テレビ系)だ。タレントの告白が真実であれば「トゥルー」を、ウソであれば「ダウト」のカードを見せるゲーム感覚のバラエティだったが、あびる優の発言は限度を超えていた。
「集団で店の倉庫からお菓子や飲み物を段ボールで運び出していて、そのお店、つぶれちゃったんですよ」
あびるが出したカードは「トゥルー」で、オンエア後に視聴者の抗議が殺到。所属のホリプロは無期限謹慎を言い渡し(とはいえ2カ月で復帰)、番組の視聴率が急降下して、1カ月後に打ち切りとなった。
記念の節目を前にやらかしたのは松山千春だ。デビュー前からバックアップした地元の札幌テレビが、デビュー30周年を記念して「30年目の旅立ち」という特別番組をプログラム。貴重な映像の数々で飾られる予定だったが、オンエアの07年2月18日を間近に控えた2月12日、京都府警はこんな発表をする。
〈歌手の松山千春が会津小鉄会のパーティで歌った〉
番組が中止になっただけでなく、デビューから続けてきたラジオ番組も強制終了となった。
最後は「ダウンタウンのごっつええ感じ」(91~97年、フジテレビ系)を、珍しい理由で終わらせた松本人志のケースを。同番組は20%を超える高視聴率番組だったが、97年11月2日に突然、終了する。その理由は9月下旬に番組のスペシャルが、優勝までマジック1と迫っていたヤクルト戦に差し替えられたこと。
「こんなん聞いてへん」
ヤクルトの放映権を持つフジテレビは中継をしたいし、松本は「この日の放送でなければ意味がない」と、スペシャルの1週延期を拒否。そして90年代を代表するコント番組は、そのまま姿を消した‥‥。