●ゲスト:パックン(パトリック・ハーラン) 1970年、アメリカ・コロラド州出身。93年、ハーバード大学卒業後に来日。来日後は福井県の私立英会話学校講師のかたわら、アマチュア劇団で活動していた。その後、役者になるため上京。97年、お笑いコンビ「パックンマックン」結成。NHK「爆笑オンエアバトル」で人気に。個人でNHK「英語でしゃべらナイト」にも出演。12年、池上彰氏の推薦で東京工業大学のリベラルアーツセンターの非常勤講師に就任、「コミュニケーション学」や「国際関係」について教鞭をとっている。今回の大統領選挙では多数の番組にコメンテーターとして出演。BS-TBS「外国人記者は見た+」の司会など、多数の番組に出演中。近著に「大統領の演説」(角川新書)がある。17年1月に来日公演をする母校ハーバードグリークラブのアジアツアーの公式親善大使および司会を務める。www.harvardgleeclubjapan.com
お笑いコンビ「パックンマックン」での活動と並行して、国際問題に関する切れ味鋭いコメンテーターとしても活躍中のパックン。だが、先のアメリカ大統領選ではまさかの結果に驚愕、タメ息の日々が続いているらしい。天才テリーも興味津々、アメリカの未来はどうなる!?
テリー アメリカ大統領選の開票日、パックンとは朝からTBSの「ビビット」で一緒だったよね。
パックン アハハ、やっぱりその話ですか。
テリー そりゃそうだよ。パックンは「僕もヒラリーさんに投票したし、大統領は絶対彼女で間違いない」って言ってたし。
パックン いや、「絶対」とは言っていないですよ!「7対3でヒラリーさん」と、3割の余地は残していたんです。それなのに、みんなから「お前は100%ヒラリーさんと言った」と責められちゃって。いつの間にか、みんなの記憶がすり替えられているんです。
テリー ええっ、俺、今の今まで「いつまでも言い訳して、往生際が悪いな」って思ってたよ(笑)。
パックン ひどいなァ。それに得票数ではヒラリーさんが勝ってるんですから、それほど見方が間違っていたわけでもないんです。
テリー でも、結果としてトランプさんになったじゃない。
パックン ハァ~(深いタメ息をついて)、なっちゃいましたねェ。
テリー まァ、それについてはいろいろな分析ができると思うけどさ、俺がいちばんおかしいと思うのは、トランプさんが大統領に決まってから、「選挙中は過激な発言が目立ったけど、大統領になったら常識的にやるんじゃないか」「意外といい人なんじゃないか」っていう空気が、日本中に流れ始めたこと。俺はそれ、全然違うと思うんだよね。
パックン 僕もそう思います。心理学的にも、自分の望まない結果を受け入れるために、それを正当化したり楽観的に考えようという心理が働くことはよくあるみたいです。だから、「あれは選挙に勝つためのパフォーマンス」と、何の根拠もないのに考えようとする人が出てくる。でも大統領に決まってからも、彼は非常識ぶりを見せています。
テリー ああ、「イスラムは悪性ガンだ」と発言したフリン将軍を、重要ポストである安全保障問題担当大統領補佐官に任命していたね。
パックン ええ、少なくとも内閣メンバーの2人は、差別主義者として今までに大問題を起こしています。もし、勝利演説の「分裂したアメリカをまた1つにする」のがトランプさんの本音であれば、ああいう人は任命しないはずです。
テリー 俺も、何で日本の人たちが「いい人なんじゃないか」と言ってるのか、よくわかんない。
パックン あと、このタイミングで安倍首相と会ったのも非常識ですよ。大統領は、当選したらまずイギリスに電話を入れなきゃいけない規範があるんです。
テリー そりゃそうだ。1番の同盟国だからね。
パックン そうです。規範から言えば、日本やドイツはそのあとなんです。あと、あんなに気軽に対応されると、他の国々が「ちょっと会いたい」と言った時に断れなくなります。大統領が会談に応じるというのは、実はとても大変なこと。つまり、外交上の大事なカードをすごく安く切ったことになる。あんな無知で未経験な男が、大統領になるんですから、「毎日20時間ぐらい勉強しろ」と言いたいですよ。
テリー ハハハ、パックンのタメ息が大きくなるのも、よくわかるよ。