テリー トランプさんは当選前に「法人税を15%下げる」「相続税廃止」とか、いろいろ公約を掲げていたけど、実際どのぐらい実現できると思う?
パックン 1~2割くらいじゃないですか?
テリー そうだよね。日本で民主党が政権を取った時、「沖縄の基地は最低でも県外」「高速道路を無料化」とか言ってたけど、結局、何もできなかった。それに近いことが、これからアメリカで起きるんじゃないかと思うんだよね。
パックン そもそも財源もないのに、税金なんか下げられるわけがないですからねェ。
テリー そうなると、アメリカ人は「ふざけんなトランプ、ウソばっかりつきやがって!」ってなるんじゃないの?
パックン その可能性はあります。だから、やりやすいところから手をつけていくでしょうね。その1つが、TPPに参加しないこと。これはたぶん、放っておけばアメリカ議会で批准されないから、彼が何もしなくても約束の1つは果たせるんです。
テリー 確かに、これはやりやすいよね。
パックン もう1つ、就任した瞬間にでもできるのは移民政策です。法律を変えるのは議会の協力がないとできませんけど、オバマ大統領は大統領命令でいろいろやっているんです。例えば未成年を強制送還しないとか、不法移民でもアメリカ軍に3~4年勤めたら国籍をあげたり、永住権を認めたりしていたんです。でもそれは、トランプさんが大統領になった瞬間にやめることができる。
テリー 命令を出さなきゃいいだけだ。
パックン そうです。だけど実施したことと、実際やってみて、その施策が3~4年後に評価されるかどうかは、また別問題ですからね。「できること」と「やるべきこと」は、明らかに違いますし。
テリー 実際、投票率でも半数以上はトランプさんを支持してないわけだから、あまりムチャはできないよね。
パックン そうです。得票率46%で当選したわけで、その少数派である自分の支持者だけが強く望むことを全部やってしまったら、過半数を敵に回すことになりますね。
テリー でも、トランプさんの問題は、そんな状況でもやってしまう可能性があるところなんだよね。
パックン ええ、今回と同じぐらい自分を強く応援してる人たちを敵に回さないかぎりは、次回も再選できると見込んでいると思います。たぶん、減税とか、一部の人が強く望むことはやろうとするでしょう。
テリー それはどういう方法で?
パックン いちばんやってはいけないことなんですけれど、恐らく温暖化対策から身を引くでしょう。COP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)はいちおう4年間有効になっているので、簡単には抜けられないけど、抜けたも同然のことはできる。大統領は行政のトップですから、そこに人と予算を与えなければいい。
テリー なるほど、骨抜きにするわけだ。
パックン COP21は参加する義務はあるけど、実際には拘束力はないし罰則もない。残念ながら、恐らくすぐ取りやめるでしょうね。だって彼は「温暖化は、アメリカの競争率を下げるために中国が作った陰謀説だ」と言ってるんですよ! これはパフォーマンスじゃなく、彼が本当に信じていることなんです。