プレゼント用のサインバットを手にした落合氏は、
「野球少年も来てくれたみたいだから、ふだんオレは子供には教えないんだけど今日は特別にバッティングのコツを教えてやるよ」
と言うや、着ていたジャケットを脱ぎ、打撃解説を始めたのだが──。
「ある時期から日本の指導者はヒッチ(バットをユラユラと上下動させる)やコック(バットのヘッドが背中に入ること)をしてはいけないと教えるようになったのが、そもそもの間違い。それだと体はスムーズに動かないし、スイングにスピードは出ない。悪い例が、元中日の和田一浩ですよ。上半身と下半身の動きがそろう、武士のようなぎこちない打撃フォームだった。あれはダメ。3年間アドバイスしたけど、結局、習得できなかった」
球団関係者はこれに苦笑いする。
「和田は落合政権中にシーズンMVPも獲ったし、優勝にはずいぶん貢献していますよ。それなのにコキ下ろすとはね。15年オフ、当時の谷繁監督はGMの落合氏に『和田はまだ使えるから残してほしい。森野(将彦)よりも使える』と要望したのに、落合氏はそれを無視して森野を残し、和田を切った。しかも谷繁には何の相談もなく和田を呼んで『もう契約しないから』と通告したんです。谷繁はあとでそれを知り、驚くと同時に『ひと言、相談があってもいいだろ』と不満をブチまけていましたね」
通算2050安打を記録して名球会にも入ったかつての教え子に対し、いとも簡単にダメ出しした落合氏だけに、現有戦力についても手厳しかった。
「今の選手は頭を使わなくなったし、練習もしなくなりました。言われたことを全部鵜呑みにするからダメなんです」
さて、落合氏は今後、球界にどう関わっていくのか。
「いや、球界の仕事をすることはほとんどないでしょうね。監督としての経歴に、GMの大失敗でミソをつけた。とにかく、イメージが悪すぎます。だからマスコミもなかなか使おうとしません」(スポーツ紙デスク)
およそ90分にわたってオレ流トークを続けた落合氏は思い出したように、こんなことを口にした。
「そういえば息子が最近、オレのことを『ジイさん』と呼ぶんだよ。『オレはお前の親父だろう』と言ったら、『孫から見た序列で呼んでいる』と言われたよ。今がいちばん落ち着いた、平和な時間を過ごしている」
平和な生活の合間を縫って、時々こうしてぶっちゃけ話で球界に“貢献”してくれればいいのだが。