吉本興業の女性マネジャー殴打事件(04年)、3人組若手芸人「東京03」襲撃事件(09年)をはじめ、紳助が起こした暴力事件は枚挙にイトマがない。あらためて本誌だけが知っている紳助の「ヤクザ言動史」を振り返る。
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紳助が広大な屋敷を構えていた大阪・能勢町。ここで地元住民のK氏を恫喝したのは03年。
K氏は「世界格闘技団体連合振興会」の相談役でもあり、幅広い人脈を有し、地元の町会議員や実業家とも親交が深い。そのため、地元で困ることがあると、住民は皆、相談に出向く、顔役でもあるのだ。
K氏が相談に乗っている住民の知人に、紳助の自宅にスタッフを派遣し、庭掃除や植木の剪定をする契約を結んでいる造園会社の関係者がいた。
ある日、スタッフがモーターを切らず、カッターが作動した状態で庭の斜面に芝刈り機を置いたまま、休憩していた。ところが、運悪く何かの拍子で、草刈り機がスタッフの脚に落ちてきた。
スタッフは足首を切断する大ケガを負った。
もちろん、事故自体は造園会社のスタッフが草刈り機のモーターを作動させたまま、休憩に入ったという不注意から起こったもの。
そのため、造園会社から紳助のほうに謝罪を入れた。
だが、紳助からは依頼主として「大変でしたね」といういたわりの言葉一つなかったという。
そんな話を知人から聞いたK氏は、割り切れなさを感じ、しだいに怒りが込み上げてきた。
K氏は紳助邸を訪問すると、
「依頼主として、ちゃんと対応してほしい」
と切り出した。
すると、紳助は急に凄みだし、まくしたてたというのだ。
「何ですか! タカリに来たんですか」
「そっちがそういうんならこっちも出しますよ」
あげくの果てに、
「オレのケツモチをどこだと思ってる。極心連合会やぞ!」
と激しい口調でわめき立てたのだ。
K氏も負けてはいない。
「こら、タレントが何をぬかすんや。ヤクザの名前なんか出すな」
山口組の名前を出しても気後れしないK氏に、相手が悪いと思ったのか、紳助はだんだん神妙になっていったという。
K氏はいくつかの組関係者とも交遊関係があった。そして組織とつながりのある芸能人の中には、Kさんの知人で紳助に近い人物もいた。
「オレのことを(その芸能人に)聞いてみろ」
K氏が言い放つと、紳助は態度を一転。こう言った。
「あっ、そうなんですか?じゃ、聞いてみます。で、ちゃんとさしてもらいます」 その後、日を置いて2度、紳助から電話がかかってきた。
「今、東京にいるんですけども、この間は申し訳ございませんでした」
丁重な言葉遣いだった。芸能人仲間から相手の素性を知って、態度を急変させたのだ。 その後、手のひらを返したように、ケガをした造園会社のスタッフのもとには詫び状や品物が届いたという。
髪の毛をつかみ引きずって
強い者にはペコペコするくせに、相手が弱いと見ると徹底的に痛めつける。そんな素顔がかいま見える紳助は、かつて番組収録中、麒麟・田村の前歯を折り、肋骨を骨折するケガを負わせていた。
事件は01年、「太っ腹!紳助ファンど」(関西テレビ)というバラエティ番組の本番収録中に発生した。「番組はメイン司会を紳助が務め、保阪尚輝、山川恵里佳ら人気タレントや麒麟などの吉本興業の若手芸人が出演していました。その日は麒麟の田村が『1日ホスト体験』という企画でレポーターを務め、若い女の子とトークしていた。2人の掛け合いがしばらく続き、そのあと『ここだけの話、ほんまにオモロない芸人は誰や』みたいな話になった」(見学者の一人)
当時の麒麟は吉本若手芸人の中でも成長株。その年、若手芸人の登竜門「M─1」で決勝に進んだほどだ。
ところが、笑いを取るつもりで出した名前が悪かった。
「紳助はオモロない芸人の一人として自分の名前が登場すると、顔が引きつっていった。そして、VTRが終わるか終わらないかという時、田村の髪の毛を右手でつかみ、スタジオ内を引きずり回したんですよ。ええ、全員が見ている前でね」(見学者)
凄まじい形相に誰も紳助を止めるスタッフはいなかった。
「紳助はぐったりした田村を楽屋に連れ込み、今度は頭を壁に打ちつけるなど、女子マネジャー暴行事件と一緒のことをやったんです」(番組関係者)
凄まじい暴行を受けた田村は前歯1本と肋骨を骨折していた。
紳助は田村をリンチしただけでは収まらず、番組スタッフの一人も殴った。
ところが、これだけ荒れたのに、紳助には一切おとがめなし。
「その代わり、麒麟とディレクターは番組を降板させられた。何も悪いことをやっていないのに、2人とも泣き寝入りでした」(番組関係者)
紳助は引退会見でも自身のことを「チンピラ」と評していたが、言動史をひもとくと、まさしくチンピラそのもの。権力をカサに着てのやりたい放題は見苦しいことこの上ない──。