吉高由里子の主演ドラマ「わたし、定時で帰ります。」(TBS系)が4月16日にスタート。初回は視聴率9.5%をマークし、火曜22時枠としては上々の出だしとなった。その第一話では吉高とKAT-TUN中丸雄一のキスシーンが大きな話題となったほか、中華料理店の店主役を務める江口のりこの演技力にも注目が集まっている。
ドラマでは吉高が上海飯店の常連客という設定で、同店のツイッターもフォロー。序盤では店内で、育休中の先輩・八重(内田有紀)と仕事への取り組み方について議論する場面もあり、この店が作品における重要なアクセントとなっている。ここで江口の演じている「中国人店主」役について、海外事情に詳しいトラベルライターが指摘する。
「視聴者からは江口のしゃべる“中国語訛り”がうまいと評価されていますが、実際にはあり得ない発音を連発しています。言語の違いから中国人は“っ”の促音や“ー”の長音を苦手としていますが、江口は序盤でいきなり『ハッピーアワー終了!』と、その両方を含んだセリフを放ったのだから驚きました。“っ”がマスターできている中国人はほとんど訛りのない日本語を話しますし、この演出は『日本語の苦手な中国人』というステレオタイプを描いたことになる。エンドクレジットには中国語指導のスタッフ名も入っていましたが、“中国語訛りの日本語”までは指導していなかったようですね」
同様の例は14日にスタートしたドラマ「あなたの番です」(日本テレビ系)でも垣間見られた。こちらでは金澤美穂が中国人留学生役を務めているが年上男性を「君づけ」で呼んでいる。
「この“君づけ”も、本来、中国語の性質からいって考えにくい間違いで、やはり“中国人は日本語が苦手”という思い込みが先に立って間違った演出をしています」(前出・トラベルライター)
そして、こうした演出は、日本のドラマだからいいものの、もしハリウッドやアメリカのテレビ業界だったら大きな問題になりかねないというのだ。前出のトラベルライターが続ける。
「アメリカではいまや『文化の盗用』(Cultural appropriation)が大きな問題のひとつとみなされています。白人が顔を黒く塗って黒人を演じる“ブラックフェイス”がタブーであることは日本でも知られるようになりましたが、今ではアジア人の役を白人が演じることも“ホワイトウォッシング”として非難の対象となっています。『攻殻機動隊』を実写化した17年の映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』では、草薙素子役をスカーレット・ヨハンソンが演じていることに非難が集まりました。それを日本に当てはめれば、そもそも、中国人役を江口や金澤が演じた今季のドラマはアウトということになります。現状では中国系の俳優が少ないこともあり、日本人女優の起用は致し方ないところですが、セリフだけでも“本当の中国語訛り”“中国語の性質”にこだわって、ステレオタイプの中国人像を避けるべきだったかもしれません」
もちろん、ハッキリしているのは、中国人役を演じた江口や金澤には何ら責任はない。それでも、テレビ局側はアメリカから世界に広がりつつある“文化の盗用”問題に、もう少し敏感になったほうがいいのかもしれない。
(金田麻有)