3月28日にミャンマーで発生したマグニチュード7.7の巨大地震で、ミャンマーの軍事政権当局は「3月30日までの死者数は、少なくとも1700人に達した」と発表した。ところがアメリカの地質調査所(USGS)は「最終的な死者数は1万人を超える公算が大きい」と不気味な指摘をしている。
ここで注目したいのは、震源からおよそ1000キロも離れたタイの首都バンコクで、建設中の高層ビルがあっけなく倒壊した事実だ。これは長周期地震動によるものとみられている。
長周期地震動は周期2秒以上のゆったりとした地震波で、この周期の揺れは高層建築物に大きな被害をもたらすとされている。事実、2011年の東日本大震災でも、震源から約770キロ離れた大阪市で、超高層ビルのエレベーターが破壊されるなどの被害が出た。
中でも恐ろしいのが、「建物の固有周期」と「地震波の周期」が同調してしまう「共振」という現象である。共振のスパイラルに突入してしまうと建物の揺れは際限なく増幅していき、やがて耐震限界を超えて倒壊に至る。
バンコクにおける今回の高層ビルの倒壊も、軟弱地盤の上に建つビルが長周期地震動と同調し、共振のスパイラルに陥ってしまったのが原因とされる。
言うまでもなく、長周期地震動の脅威は他人事ではない。地震工学の専門家は、次のように警鐘を鳴らしている。
「日本でも臨海部埋立地など軟弱地盤の上に、タワマンなどの高層建築物が林立しています。このような高層建築物が長周期地震動によって倒壊に至るか否かは、それぞれの建物が持つ固有周期と、地震で発生した長周期地震動とが同調するかどうかで決まる。要するに、どのタワマンが倒壊するかは運次第、というわけです」
家具類を固定しようがしまいが、建物が倒壊してしまえば一巻の終わり。なんとも恐ろしい指摘である。
(石森巌)