テレビは、理性で抑えようとした人の感情をも浮き彫りにする。カメラがあることも忘れて激高した瞬間、視聴者は貴重な場面を目にすることになる。
4月14日にオンエアされた「真相報道バンキシャ!」(日本テレビ系)にて、メインの福澤朗(55)が冷静さを欠くシーンがあった。
「いつまでも反抗期ですね」
辛辣な言葉を投げかけたのは、ゲストの社会学者・古市憲寿氏(34)に対して。この日のテーマは「新紙幣のデザイン」であったが、軽くコメントを求めたつもりだったのに、古市氏の舌鋒が止まらない。
「僕はすごくダサいと思うんですけど、どうですか、これ?」
進行上、そこそこに切り上げたかった福澤は、古市氏のダラダラ続く持論にしかめっ面。エンディングで「しばらく会いたくないですね」との絶縁宣言が日曜の茶の間を凍らせた。
さて、時計の針を少し戻してみよう。オンナたちの緊迫した場面が記録されていたこともあった。芸能評論家の織田祐二氏が言う。
「04年にオンエアされた『堂本剛の正直しんどい』(テレビ朝日系)で、若槻千夏(35)や根本はるみ(38)、小向美奈子(34)らグラドルたちと、車で温泉旅行という企画があった。当時19歳の小向は途中からの参加でしたが、そのとたんに車内はピリピリしたムードが充満しました」
やがて温泉に着くと、水着に着替えた若槻や根本を眺めつつ、小向は水着になろうとしない。
「事務所の方針で、テレビでの水着はNGなんです」
温泉ロケの趣旨で、しかも遅れて参加しながら、まさかの宣言。これには、さすがに若槻が猛ツッコミ。
「いつも水着になってんじゃん!」
織田氏が続ける。
「あの時の若槻の『マジ言ってんの? ウソでしょ?』と詰め寄る表情が忘れられない。完全に事故でしたね」
80年代前半に活躍した「横浜銀蝿」と「ラッツ&スター」は、思いがけない緊迫感を生んだ。人気番組「ザ・ベストテン」(TBS系)でのことである。当時「シブがき隊」の一員でたびたび番組に出ていた布川敏和が、目撃談を明かしてくれた。
「ラッツ&スターが歌い終えてソファーに座っていて、そのあとに銀蝿の翔さんがMCで大学の話をされていたんですよ。すると、ラッツの面々が『へえ~、ツッパリなのに大学に行くんだ』って冷ややかな声。実は銀蝿って、それぞれ頭もいい“ビジネス不良”で、ラッツのほうが筋金入りの“本物”なんです。その視線を受けて、銀蝿の皆さんは歌いにくそうにしていましたね」
この2組よりも先輩にあたる吉田拓郎(73)と松山千春(63)も、視聴者をハラハラさせる舌戦を展開した。拓郎が初めて音楽バラエティーの司会を務めた「LOVELOVEあいしてる」(フジテレビ系)に、千春が00年にメインゲストで出演。
ところが、開口一番、「拓郎は昔からオレのことが嫌いだった」と爆弾発言。この2人は、意外にもこの日が初対面である。
「オレは拓郎に喝を入れに来た」
「オレは拓郎にはなりたくない。オレみたいな後輩がいてよかったな、拓郎」
千春節のオンパレードに拓郎の口数は少なくなり、サングラスの奥の目には怒りがにじんでいた。トークの大半は、ともに司会を務める「Kinki Kids」が仕切ることになり、拓郎と千春が最後まで打ち解けることはなかった‥‥。