焦った表情で弁解すればするほどその説明はそらぞらしく、疑惑を塗り重ねる都知事。誰がどう見ても怪しげな5000万円をもらっておきながら、捜査から逃れたい一心で猿知恵をフル回転させる姿は哀れですらある。だが一般社会同様、筋の通らない言い逃れは、裏の社会からも「ケジメをつけんかい!」と一喝される始末なのだ。
「あの会見」をテレビで見ていた西日本の広域組織幹部は苦笑いしながらも厳しい口調でこう振り返った。
「目が泳いで‥‥もう泳ぎ倒してるわな。弁護士なり誰かに言われたことを一生懸命、演技してしゃべってるようにしか見えないね。本当なら涙を流して、自分にはそういう意思はなかったけど誤解されるようなことをして申し訳ない、と言えば見る側に同情心も出るんやけどな。口から唾飛ばす前に目から涙流さなアカンのとちゃうか」
猪瀬直樹都知事(67)が日本最大の医療法人「徳洲会」グループから「疑惑の5000万円」を秘密裏に受け取っていた件で、11月26日に開いた緊急会見はまさしく噴飯物と言うにぴったりの内容だった。
猪瀬氏は得意げに「借用証」を振りかざし、選挙資金、政治資金ではなく個人的な借り入れであったことを力説した。ところが、A4の紙切れ1枚の借用証に書かれてあったのは、日付、額面、猪瀬氏の住所とサインのみ。押印も印紙も毅氏のサインもなければ、返済期限も返済方法も明記されていなかった。おまけに無利子無担保といういかがわしさ。「何じゃこりゃ」と言いたくなるあまりにお粗末なシロモノに、報道陣からは「それは最近作ったものではないのか」という「偽造」を疑う質問も出たのだった。
先の広域組織幹部はバッサリと斬り捨てる。
「無利子無担保無期限? それやったら銀行いらんやないか。これは暗黙の、恩を売った、受けた、いずれどこかで調整しましょう、という目に見えない約束事の証明や。5000万円いうたら一般人が一生かけて家を買うぐらいの金額やろ。なのに印鑑すらない紙切れ一枚を堂々と出してくること自体が、東京五輪招致で成果を上げておごり高ぶっている証拠。都民を確実に裏切った行為と言えるわな」
そもそもの発端は昨年11月6日、当時、副知事だった猪瀬氏が仲介者を伴って、神奈川県鎌倉市内の病院に入院中の徳洲会創設者・徳田虎雄前理事長(75)を訪ねて「(12月の)都知事選に立候補します」と挨拶し、応援を要請したことにあった。11月14日、猪瀬氏は虎雄氏の長男である徳田毅衆院議員(42)と会食し、その席で選挙資金貸し付けの話題が出る。19日には毅氏が虎雄氏に電話し、猪瀬氏への資金提供について相談。毅氏が「猪瀬氏が1億円欲しいと言っている」と伝えると、虎雄氏は「とりあえず5000万円だ。足がつかないようにしろ」と「黒いカネ」であることを認識しているかのような指示を出したという。そして翌20日、永田町の議員会館で毅氏から猪瀬氏に、紙袋に入った現金5000万円が手渡された。
◆アサヒ芸能12/3発売(12/12号)より