猪瀬氏を窮地に追い込んだのは「身内」だけではなかった。昨年11月、元大阪高検公安部長・三井環氏が代表を務める市民団体「市民連帯の会」が特捜部に、猪瀬氏、毅氏、そして徳田虎雄前理事長(75)に関する告発状を提出。公職選挙法違反(選挙運動収支報告書などへの虚偽記載)、贈収賄などの容疑であり、特捜部は今年1月7日にこれを受理している。
「なぜ猪瀬氏らを告発したか。会見でウソばかり言うからであり、説明も二転三転し、腹が立ちました」
と話す三井氏は、こんな裏事情を明かすのだ。
「昨年11月26日、私の事務所に『徳洲会内部の人物だ』と名乗る人から電話がありました。『猪瀬からは、口裏を合わせてくれ、と言って、何度も電話がかかってきた。借用証は最近、猪瀬自身が作成したもので、徳洲会にはそもそも借用証は存在しない』と訴えてきたんです」
さらに三井氏は別の「内部証言」も得たという。猪瀬氏と虎雄氏を仲介し、5000万円の受け取りや返却にも関わったという政治団体「一水会」の木村三浩代表と、あるテレビ番組の収録で共演した時のことである。
「昨年12月10日、『たかじんのそこまで言って委員会』(読売テレビ系)の収録が東京で行われ、私と木村氏が出演しました。1時間ぐらいしゃべりましたが、そこで木村氏が言ったのは、彼が猪瀬氏の秘書とともに5000万円の返却に立ち会った際、5000万円は受け取った時の帯封付きではなく、輪ゴムで留められてあった、ということ。その輪ゴムを外してカネを数えたそうです。この部分は放送ではカットされていました」(三井氏)
加えて、木村氏には、猪瀬氏側から仲介料500万円の「当選謝礼」が渡されていたことも判明している。
猪瀬氏の説明によれば、5000万円は貸金庫に預けたまま手をつけず、そのまま返したはずである。一説には、使ってしまった5000万円をかき集めるべく、猪瀬氏は財界関係者などから借り入れしたのではないかとの情報をもとに、特捜部は札の製造番号を調べるなどして猪瀬氏のウソを立証しようとしている、とも‥‥。逮捕は秒読みのようである。三井氏は言う。
「猪瀬氏の退職金は約1000万円。本来なら懲戒解雇にしないといけなかった。私は猪瀬氏が逮捕されるまで諦めませんよ。そうしないと、この事件の真相解明はできませんから」
1月15日、特捜部は知事選の出納責任者だった女性スタッフに任意で事情聴取を行った。捜査の手はヒタヒタと「本丸」へと近づいているのだ。