今年11月20日になって明るみに出るや、21日夜に猪瀬氏は「私はまったく関知しない。知らないと言ったら知らない」と全面否定。ところが、22日午後1時過ぎに報道陣に囲まれると、「(都知事選の)資金提供という形で応援してもらうことになった」と説明を一変させる。さらに、そのわずか2時間後には「個人で借りたもので、選挙の資金ではない」。しどろもどろで二転三転させる様は何をか言わんやである。政治部デスクが解説する。
「選挙の寄付金であれば法律上、選挙運動費用収支報告書に記載しなければなりませんが、猪瀬氏が提出した報告書には徳洲会に関する記載はありません。また、政治活動のための借入金は12年の政治資金収支報告書に書く必要がありますが、ここにも徳洲会の記載はない。虚偽記載は公職選挙法違反に問われます。それではまずいということで、慌てて個人の借金ということにしたのではないか」
猪瀬氏と虎雄氏は昨年11月6日の面会が初対面であり、5000万円は「持ちかけたでもお願いしたでもない」「なぜ5000万円かはわからない」「親切な方だな、とは思った」「(提供の)申し出があれば断るのも失礼だから、とりあえず預かった。金はまったく手をつけずに(今年9月に)返した」と説明した。つまり初対面の人間から、根拠不明の5000万円を、借りる必要もないのに借りたという、およそ常識では考えられないことを平然と言い放ち、裏金要求疑惑を否定したのである。政治評論家の本澤二郎氏は、
「議員会館で毅議員から直接、現金を受け取ったということは、つまり裏金だということ。個人的に借りたというのは苦しい弁明です。現に虎雄氏の夫人は『借用証は見たことがない。返却を受ける際にも、持ってきてほしいとは言われていない』と話している。借用証は偽造の疑いが強いです」
広域組織幹部も、
「裏社会でも一般社会でも、証拠がないようにして取り引きするのは、何かやましいことをするための約束事にほかならん」
関東を拠点とする広域組織三次団体の組長は、猪瀬氏の5000万円の扱いをこう叱り飛ばすのだ。
「人から金を借りるのは何より、信用があるからだろう。俺の舎弟が店を出すのに2000万円貸してくれと言ってきたことがある。で、『借用書を取ってください。2割(利子を)つけますから』と言うから『カッコつけるんじゃねぇ。お前をかわいがって信用しているから貸すんだ。まず俺の信用を裏切らないようにすることが大事だろ』と、どなりつけてやった。なのに猪瀬は、(9月17日に)徳洲会に(公職選挙法違反容疑で)ガサが入ったから急に金を返す、という形になった。それはないだろうよ」
みずからの保身に汲々とするぶざまな発言は、彼らの目にも許しがたいと映るのだ。