「辞任」「自殺」「暗殺」‥‥、政権末期に大統領が不幸な末路をたどるのはもはや韓国政界のお家芸か? 昨年12月の「戒厳令」の〝誤宣布〟により、ついに「初の現職大統領の逮捕」という異常事態にまで発展した。今や韓国国民を真っ二つに分断する事態の背後で〝亡国ユーチューバー〟が跳梁跋扈している。
1月23日に開かれた弾劾審判4回目の弁論で、
「国会が戒厳解除要求を非常に迅速に行ったこともあり、私も解除要求決議が出されて、すぐに長官と戒厳司令官を呼び撤収を指示した」
現職大統領として、初めて弾劾裁判に出席した尹錫悦大統領(64)は、こう答弁した。去る12月3日、突如として「非常戒厳令」を宣布し内乱を首謀した、という容疑を真っ向否定してみせたのだが‥‥。今や韓国は国を二分する非常時の真っただ中にある。
外信部記者が補足する。
「憲法裁判所では、昨年末、国会で可決した弾劾の是非を巡り審理が行われており、21日の3回目の弁論で尹大統領は『非常戒厳の宣布をした際、国会議員の逮捕を命じたことはない』と嫌疑を全面的に否定しました。この日、警察は周囲に集まった数百人の尹氏支持者をバリケードで制圧するなど、物々しい雰囲気でした。これは、19日未明にソウル西部地裁が大統領の逮捕状を発付したことに対し、反発する支持者らが裁判所の敷地内に乱入するという騒ぎが起こったばかりだったからです」
現職大統領が国家元首としての権限すべてを停止されるという異常事態に直面しながら、韓国世論は意外な結果を示した。コリア・レポートの辺真一編集長が解説する。
「20日に公開された大手調査会社のリアルメーターによる世論調査によれば、政権交代を求める人が46.2%だったのに対し、尹政権が続くことを希望する人が48.6%と上回ったのです。政党支持率も与党『国民の力』の46.5%に対し、最大野党『共に民主党』はわずか39%。韓国国内のメディアは左右の別なく、概ね弾劾やむなしの論調の中、なぜか世論調査では〝ご臨終〟の低支持だった尹氏が息を吹き返しました。これには尹氏の支持者らによる暴動と同様、韓国国内の保守・極右のユーチューバーらによる影響が大きく働いていると思われます」
利用率は世界3位と、日本の23位を大きく引き離すSNS大国として知られる韓国だけに、登録者100万人超のユーチューバーの影響力は絶大で、その矛先は政治家、大統領にまで及んでいる。
辺氏によれば、尹大統領を支持する保守ユーチューバーには、朴槿恵政権時代からテレビに登場していた政治評論家の「高成国TV」(登録者116万人)や弁護士の「TV 弁護士 ペ・スンヒです」(135万人)、時事評論家の「李鳳奎TV」(95万人)、公共放送のKBS記者出身の「成昌慶TV」(95万人)などがメジャーどころという。
「こうした極右系ユーチューバーは、昨年4月の総選挙での与党の大敗を受け、直後に不正選挙を指摘。ついには、戒厳令を出すことを要求したところ、大統領就任式にお気に入りのユーチューバー約30人を招待したり、大統領府秘書室行政官など要職に起用するなど、根っからのユーチューブ好きの尹大統領が真に受けてしまった。あえなく拘束された後も『龍山(大統領官邸)に集結せよ』と扇動したわけです」(前出・外信部記者)
かくして暴論ユーチューバーにより韓国は大混乱に陥ったというのだ。