加齢に伴い気になるのが「中年太り(加齢性肥満)」。基礎代謝の低下で、体脂肪が蓄積されやすくなるのだ。高血圧や糖尿病、動脈硬化などの生活習慣病に結びつく可能性も高くなるため注意が必要だ。
最近、この中年太りのメカニズムを名古屋大学などの研究グループが、ラットの実験で解明したと発表した。研究チームは、代謝や摂食を調節する脳の視床下部のニューロン(神経細胞)に着目し、ラットの加齢に伴って視床下部の神経細胞がどのように変わるかを調べた。
ラットの視床下部の神経細胞では、脂肪が蓄積するにつれて「太ってきている」という情報を受け取る「MC4R」と呼ばれるタンパク質が重要な働きを示す。この「MC4R」は、神経細胞の「一次繊毛」というアンテナで情報をキャッチしている。しかし、このアンテナが加齢によって縮むことがわかったという。
つまり、加齢によって脳の神経細胞のアンテナが縮み、代謝の促進や摂食を制御する指令を出しにくくなる。これが中年太りにつながるのではないかということだ。
では、中年太りを防ぐにはどうすればいいのか。一番の対策は、過剰なカロリーの摂取を避けることだ。そのためには、ゆっくり食べることで満腹中枢を刺激して、食事の量をうまくコントロールすること。さらに、摂取する糖分の量を減らし、穀物や芋類、甘いものを食べすぎないことや就寝前には食事や間食を控えることもポイントだ。
摂取した食べ物を効率よく消費するためには運動も必須だ。筋トレやストレッチ、ランニングは、筋肉量の増加や基礎代謝の増加を促すだけではなく、肥満の一因と言われている男性ホルモンの低下を防ぐことにつながる。これらの生活習慣の見直しで中年太りにうまく対処しよう。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。