ご都合主義が過ぎるあまりに雑な脚本のせいで、「朝ドラ」ならぬ「浅ドラ」などと揶揄されているNHK「おむすび」。第21週「米田家の呪い」では、ヒロイン・結(橋本環奈)の祖父・永吉(松平健)と祖母・佳代(宮崎美子)が糸島から神戸を訪れ、息子(結の父)の聖人(北村有起哉)との長年のわだかまりが解消されていくというものだった。
2月27日の放送では、永吉と聖人が2人で万博記念公園を訪れる。なんだかんだあって、今まで「ホラ話」と相手にしていなかった永吉の話が実は本当だったとわかり、帰りに寄った居酒屋で父と息子が一献傾け、めでたし、めでたし。帰りに聖人が営む理髪店で初めて、永吉の髪を切るという流れだ。
そこに米田家の面々がやって来ると、永吉が聖人に向かって「やっぱりお前は本物の農家やなかな。お前は本物の理容師たい」。聖人が思わずむせび泣くシーンを挟んで、最後は結の提案で永吉を中心に米田家勢揃いでプリクラを撮影。最後の最後に「その1カ月後、永吉さんはこの世を去りました」というナレーションが入った。
これはいわゆる「ナレ死」というもの。主要となる登場人物の、死の間際や息を引き取るシーンを描かずにナレーションで済ませることを指す。
父と息子の和解からほどなくして父親が亡くなるという流れと、「ナレ死」というキーワードから、現在再放送中の朝ドラ「カムカムエヴリバディ」での、ヒロイン・安子(上白石萌音)の父・金太(甲本雅裕)が「ナレ死」を迎えた、あの伝説回を思い出した。
が、名作の誉れ高い「カムカム」は「おむすび」とは違った。親子の縁を切ったまま大戦に出征していった息子の算太(濱田岳)が、夜中にひょっこり復員してきて、金太と算太が和やかに話すも、どこか会話が噛み合わない。それが実は、金太が死の間際に見た幻だったと、視聴者はあとから知らされるという形だった。
「カムカム」のこの回が伝説になった大きな理由として、続く「あさイチ」でオープニングの挨拶後に、恒例の「朝ドラ受け」に入るも、あまりの出来事に鈴木奈穂子アナが「だめだ、もう…」と号泣してしまったことがある。
さらにその空気をなんとかしようと、ゲストのIKKOが「まぼろし~!」とやって明るくなった、ということまでも含めて、朝ドラファンの間では「伝説回」と語られているのだ。
一方の「おむすび」は、永吉の「ナレ死」を受けた「あさイチ」では、鈴木アナが特に目をウルウルさせることもなく、「ラスト、びっくりしましたね」と感想を述べただけ。博多大吉に至っては「今週の予告でね、みんな喪服を着てたから、なんとなく予感はありましたけど」と身もフタもない言いようだった。
「永吉の死」という大きなトピックでも感動を生まず、お涙頂戴のシーンも無駄に大袈裟なBGMで誤魔化すだけの安っぽさ。残すところあと4週となったが、このまま鈴木アナを一度も涙ぐませることなく、終わってしまうのだろうか。
(堀江南/テレビソムリエ)