群馬県太田市での大相撲春巡業(4月19日)で、目を見張る稽古があった。大関・琴桜が先場所優勝の大関・大の里と三番稽古を行い、10番取って6勝を挙げたのだ。
同じ相手と繰り返し稽古を行うことを三番稽古というが、琴桜は立ち合いの出足が鋭く、大の里に対し、優位に動いていた。稽古の後は、
「攻めていたし、いいんじゃないですか。体も動いてはいると思う」
と余裕の表情で語っている。
正直言ってここ2場所は、これが綱取りに挑んだ力士の相撲かと、我が目を疑った。連続優勝なら横綱と期待のかかった初場所は5勝10敗に終わり、春場所は8勝7敗で、辛うじてカド番を脱出した。相撲ライターが言う。
「三番稽古は、特定の相手への対策として行われることが少なくありません。琴桜の場合は、次の場所で綱取りを目指す大の里対策です。これまで稽古場では大の里に対し、あまりよくなかった。その意味で一歩先を行く大の里に勝ち越したことは相当、自信になったはずです」
ちなみにある日の稽古では、伯桜鵬が横綱・豊昇龍に指名されて三番稽古。伯桜鵬の星はなかなか上がらず、左差しからの一気の寄り切りで、ようやく1勝をもぎ取った。その際、伯桜鵬は次のような感想を漏らしている。
「強かったです。いい稽古ができたと思います。やはり稽古でも1回でも勝てたら自信になります。この後も上位の人たちと稽古をやりたい」
では琴桜はどうかといえば、
「体の反応を見ながら、できる時はやって、うまく持っていきたい」
そう語る表情は、失っていた自信をすっかり取り戻したという感じだった。
(蓮見茂)