約120周年周期で開花し、その後、一斉に枯死するというハチク(淡竹)。高さ20メートル、直径15センチメートルにもなる大型種で、柔らかく割りやすいことから、日本では古くから茶せんや提灯、簾などに利用されてきた。
そのハチクが全国各地で一斉に枯れ始めていることが確認され、「凶事の前兆ではないか」という声が広がっている。
ハチクの前回の開花は10年から20年の幅はあるものの、1908年の報告があり、次の開花のピークは2028年頃とされていた。しかしその前触れといえる現象が、すでに10年以上前から各地で確認されているのだ。
ハチクの開花が不吉な兆候と捉えられてきたのは、開花が非常に稀で、一斉に枯れ始めるため。人々を不安な気持ちにさせてきたことも、原因のひとつである。しかしただの伝承と言い切れないのは、過去の地震災害の歴史を紐解くとよくわかる。
1894年(明治27年)には大規模な開花が全国的に記録されているが、その年の10月28日に日本史上最大級の内陸直下型地震「濃尾地震」が発生し、7273人の死者を出している。また1929年から1931年(昭和4年から6年)には、全国的にハチクとマダケが大量開花。そして1930年(昭和5年)11月26日に「北伊豆地震」が発生している。最大でマグニチュード5程度の余震が数年間も続き、各地で発光や地鳴りといった、異常な「宏観異常現象」があったとの記録が残されている。
ハチクと地震災害の不思議な関連性は、近年でも確認されている。2004年(平成6年)には、西日本の一部の竹林で開花が確認されたが、同じ年の10月23日にマグニチュード6.8の「新潟県中越地震」が発生。上越新幹線「とき325号」の脱線が大きなニュースになった。新幹線の営業運転中の脱線事故は開業以来、初めての出来事だった。
現代の地震学では、竹の開花との直接的な因果関係は認められていないが、南海トラフ地震がいつ起きてもおかしくないといわれるだけに、ただの伝承と聞き流すわけにもいかないのである。
(ケン高田)