GWの4月29日・30日に「ニコニコ動画」のコンテンツをバーチャルからリアルに創造するイベント「ニコニコ超会議2016」が幕張メッセで開催された。注目を集めたのは、バーチャルアイドル・初音ミクと歌舞伎役者の中村獅童による新作歌舞伎「今昔饗宴千本桜 (はなくらべせんぼんざくら)」の共演。ボカロ曲(歌声の合成技術ボーカロイドで作られた曲)「千本桜」と歌舞伎の「義経千本桜」に3D投影で登場した初音ミクが、3つの時空間をさかのぼる物語だ。
「新しい試みで、会場のほかネットでのライブ中継もされました。初日の初回公演だけでも3万人以上が視聴したそうです。ネットでも『いい企画』『これが現代の技術か』と好評で、獅童も『本来アナログな舞台が、デジタルの世界でも勝負し、若い方に歌舞伎に興味を持っていただきたい一心』と伝統芸能を次世代へとつなぐ熱い思いを語っていました」(IT系ライター)
昨年は人気漫画「ONE PIECE」や絵本の名作「あらしのよるに」を公演するなど、歌舞伎界が異なったジャンルとのコラボレーションに力を入れている傾向がうかがえる。
「もともと歌舞伎は自由な発想のエンターテインメントでしたが、長いこと伝統芸能の堅苦しいイメージが強かったのです。それを切り崩したのは、宙乗りやエンターテインメント性に富んだ演出を取り入れ、後にスーパー歌舞伎を創始した先代の猿之助(現猿翁)。そして現代に歌舞伎の裾野を広げた第一の功労者が、亡くなった中村勘三郎です。歌舞伎と現代の人気劇作家との新作コラボ、コクーン歌舞伎や平成中村座、四国の金丸座での“こんぴら歌舞伎”を実現させるなど、画期的な取り組みを行いました」(週刊誌記者)
獅童も、そんな歌舞伎界の先人たちを目指しているのかもしれない。
(大門はな)