1976年9月から、一度も休載することなく「週刊少年ジャンプ」で連載を続けてきた「こち亀」が、ついに完結することが発表された。最終回を目前に、作者の秋本治氏と同期デビューの盟友、秋本氏が憧れた先輩、ジャンプ黄金期の編集長ら漫画界の重鎮に、「こち亀」40周年の秘話を総直撃で聞いた!!
「両さんはお祭りが大好きなんで、40周年を祝ってもらった時にスッと消えるのが、両さんらしい大団円の場だと思った」
9月3日、神田明神で行われた“こち亀絵巻奉納”の記者会見で、「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の作者・秋本治氏はそう言って連載終了を宣言した。ごく一部の関係者しか知らなかった、長期連載の終焉。朝日、毎日、読売新聞、テレビなどが報じるほど特大の驚きだった。
「こち亀」は、浅草生まれで人情派かつ破天荒な警察官の両津勘吉、通称“両さん”が、勤務先の派出所を中心にさまざまな騒動を起こす、週刊少年ジャンプ連載中の人気漫画だ。前人未到の全200巻のコミック単行本の累計発行部数は、約1億5000万部。アニメやドラマ、舞台などにもなっている。
76年6月に読み切り掲載された第1話が好評を博し、「こち亀」の連載が開始したのが同年9月のこと。少年漫画誌としては後発だったジャンプだが、73年に発行部数で当時トップを走っていた週刊少年マガジンを抜き去り、漫画界に確固たる地位を築き上げていった。「こち亀」が人気連載としての地位を確固たるものにするのと併せるように、雑誌自体も破竹の勢いで部数を伸ばしていく。78年には200万部を突破するのだ。
発行部数が歴代最高の653万部となった94年12月当時の編集長であり、現在は出版社「株式会社コアミックス」の代表取締役を務める堀江信彦氏は、「こち亀」をこう評する。
「私が入社した76年に、『こち亀』はすでに人気漫画でした。読者アンケートでも、毎回高い順位を安定して取っていました。なので新連載や、他の作品にとって『こち亀』より上に行くことが一つの目標となる、という漫画でしたね」
読者アンケートによって、掲載順位や連載期間が決まるのが少年ジャンプの厳しい掟である。その指標となっていた「こち亀」だが、堀江氏が編集長時代には、後ろのほうに掲載されることが多かった。
「秋本先生にはとても申し訳ないのですが、読者に雑誌を最後まで読みきってほしかったのです。そこで、あえて人気があった『こち亀』をいちばん最後に掲載していました。編集長としては、本当にありがたい作品でした」(前出・堀江氏)
まさに、ジャンプ黄金期の屋台骨を支えていたのが「こち亀」だったのだ。