1月20日にトランプ氏がアメリカ大統領に就任する。奇異な発言ばかりクローズアップされるが、その陣営と「100日計画と28公約」には日本の近未来像が鮮明に表れていた。経済評論家・渡邉哲也氏が緊急レポートした、「トランプ大統領」の真相。米中経済戦争元年にあって、日本は復活を遂げるのか──。
1月20日に就任するアメリカの新大統領、ドナルド・トランプ氏(70)に、興味を覚えている人は多いだろう。もっとも興味の大半は、多くのメディアが意図的に偏重して報じた、その奇異な発言や性格にある。
私はトランプ氏の当選を、「貧者の一票による無血革命」と呼んでいる。デフレ脱出の最良の策と言われながら、グローバリズムと金融至上主義は、世界中で無尽蔵に貧富の格差を生み出した。その貧者の一票がもたらした「革命」こそ、昨年6月のイギリスEU離脱と、トランプ大統領の誕生だからである。
今後日本経済が好景気に転化するかしないかの鍵は、日本にとって遠くて最も近い国「アメリカ」との関係にある。トランプ政治を知れば知るほど、ただの「変人」とは思えない「ネオ黒船」の戦慄の正体が見えてくるのだ。そして、これを知ることこそ、デフレ脱出のヒントと言える。
まず注目しなければならないのは、明らかになった政権の陣容である。中でも、新政権で新設される「国家通商会議」の初代委員長として登用された、カリフォルニア大学アーバイン校教授のピーター・ナヴァロ氏(67)は、覚えておくべきキーマンの一人だ。地政学から経済にアプローチする異色の論客で、トランプ氏の経済政策はナヴァロ氏の思想が反映されていると言われている。いみじくも、12月25日放送の「Mr.サンデー」(フジテレビ系)ではジャーナリストの木村太郎氏もキーマンとして紹介し、著書「米中もし戦わば」(文藝春秋)を必読としていた。その思想を一言で言えば、反中・知日である。
昨年11月に勝利したトランプ氏だが、同月ナヴァロ氏は、トランプ政権の外交顧問とともに、外交・安全保障専門誌「フォーリン・ポリシー」に寄稿した。その中で、トランプ政権が、冷戦下に当時のレーガン大統領が行った、
「力による外交戦略」
を受け継ぐべきであることを明言している。ナヴァロ氏は、米国の軍拡、特にアジア・太平洋地域全体の軍拡と、中国包囲網拡大を主張する論客だが、政権への影響力は、「100日計画」の「国防予算の強制削減を廃止」でも明らかだ。オバマ政権が実質的に放置したことによって、中国に実効支配された南沙諸島についても、ナヴァロ氏は中国に否定的な立場である。
トランプ氏による「ネオ黒船」の「砲身」は、「中国」に向けたものであることは間違いない。
1月3日には合衆国通商代表部(USTR)の代表に、ロバート・ライトハイザー氏(69)の指名が発表されたが、レーガン政権で同部の次席代表を務めた人物。アメリカでUSTR代表は閣僚級の重要ポストで、大統領直属の外交交渉権を持つ、いわば経済外交面のトップだ。そのライトハイザー氏も対中“強硬派”。指名にあたってトランプ氏は、
「米国から繁栄を奪う誤った貿易政策を転換させるために活躍するだろう」
と発言したが、これこそ米民主党政権時代に行われてきた、親中政策から反中政策への転換の宣言である。
経済評論家・渡邉哲也