吉本興業とTBSテレビが共催するお笑いコンテスト「キングオブコント2018」もついに9月22日の決勝戦を間近に控えている。
2000組をゆうに超える参加者の中から頂上を目指し、“コントのスペシャリスト”としての栄光を手にするべく激闘を繰り広げる同大会だが、これまでその頂上の座に登りつめてきた歴代の優勝者たちがみな、芸能界における確固たる地位を築いているかと言えば、そうでもない事情があるようだ。
「2008年の第1回大会を制したバッファロー吾郎を始め、キングオブコメディやロバート、バイきんぐ、かもめんたる、シソンヌ、そしてコロコロチキチキペッパーズといった名だたるコント師たちが歴代覇者として顔をそろえていますが、その中で、大会優勝後に何年も継続してバラエティ番組に生き残っているコンビはごく一握りと言っても過言ではないでしょう。コンビ単位ではなく、ピンとしてテレビからお呼びがかかるバイきんぐの小峠英二やコロチキのナダルなどはいますが、彼らはコント内での役柄をそのままバラエティでのフリートーク時のキャラにうまく落とし込むことができている印象ですね」(テレビ誌ライター)
かつて、ダウンタウンの松本人志やバナナマンの設楽統が執拗に唱えていたのは、コント師は漫才師とは違い、「2度ブレイクする必要がある」というもの。漫才師は、芸人の素のキャラクターや性格のまま掛け合いを繰り広げるが、コント師は脚本の中でのキャラクターや役柄を演じたうえでステージに立つため、作り込んだ設定上のキャラクターがウケたとしても、次にもう一度“芸人としての素の自分”を売り込む必要があるのだ。
「たとえば、銀行強盗という設定のコントで大ブレイクを果たしたとしても、その強盗のキャラ設定のままバラエティのトーク番組に出てしゃべることは不可能なわけです。テレビでフリートークに臨む際は、“銀行強盗の犯人”ではなく、素の状態で挑む必要があり、コントの中でのキャラと素の自分という2つを世間に受け入れてもらわなければなりません。バナナマンがコントで最初のブレイクを果たしてから、2度目の春を謳歌するまでにかなりの時間を要したのもそのあたりが影響しているのでしょう。よって、コント内でもバラエティでも“ツッコミ役”という同じ役割をこなすことができている小峠や、コント内でも素の状態でもどちらも“キザキャラ”で統一できているナダルなどは1度のブレイクで事足りているのかもしれません」(前出・テレビ誌ライター)
同じく吉本が主催する漫才コンテストのM-1などと比較すると、やはりキングオブコントの優勝者のその後のキャリアにはやや物足りないイメージもある。単なる“コントの達人”として終わってしまうケースも少なくない。
もちろん今年度のキングオブコントを制すのがどのコンビになるのかは気になるところだが、コント師にとって同大会を制覇するだけでは、お笑い界における不動の地位を謳歌することはできないのかもしれない。
(木村慎吾)