血流が滞り細胞が機能しなくなれば、体のいたるところがダメージを受ける。
「例えば脳の病気にも汚血は深く関わっていて、認知症やパーキンソン病、頭痛、小脳性運動失調症などの細胞の故障は汚血が原因です。それ以外にも、脳周辺の病変として現れる網膜変形症や網膜剥離などの目の疾患や鼻、歯周病、また舌癌などの口腔のほとんどが、汚血の渋滞が原因で起こる疾患と考えられます」
蔡医師のクリニックではたまった汚血を吸引、取り除くため、鍼灸療法と吸引療法をベースにした「NAT鍼療法」という独自の治療を行っている。これは患部に細い針を刺鍼し、その部分を覆うように硬質ガラスを当て、中をポンプで真空にして皮膚に吸いつかせるという方法で、汚血を確実に体外へと排出できるのだという。
「汚血を取り除いたことにより、心臓病の発作が抑えられ、ガン患者の転移も最小限になった、あるいは血圧や高脂血症、高血糖など、生活習慣病が改善されたという臨床例は数えきれません。さらに皮膚病の発生を予防するとともに、治療もできる。体内毒素は生活しているうちに知らず知らずに硬くなる性質があるため、まず散らす必要があるんですが、鍼灸では散らされた毒が体内をぐるぐる回るだけで、病気の種類や症状によっては、根本的治療が難しい。その点、NAT鍼療法なら確実に毒素を吸い取れるため、効果が現れるのが格段に早い」
しかも、薬をまったく使わないため、副作用もない。
とはいえ、予防という観点から言えば、「ふだんから汚血をためないような食生活に気を配ることが必要」と蔡医師は強調する。
「健康であれば、尿や便、汗などで毒素は排出されますが、排出の力が強いということは、すなわち生命力が十分にあるということ。ところが細胞が老化し、衰弱していくと、体内の毒素、ガンの因子、悪いタンパク質を外に出せなくなる。若い頃は免疫力が正常に機能していますが、年齢とともに自己免疫力も、細胞の老化によってどうしても衰えてくる。腐敗したタンパク質や脂質は、主に食べすぎや、体によくない食材を口から取り込むことによって生じます。ですから、まずは添加物が入っていない食材を選び、食べすぎないことで、汚血をためない食生活を心がけること。これが重要です」
中国には「病は口より入り、禍は口より出ず」ということわざがある。長年蓄積された汚血がある日突然爆発し、重病化する前に日頃の食生活を見直したい。