はたして、愛弟子である貴ノ岩への暴行騒動以降、ことあるごとに相撲協会への対立姿勢を見せてきた貴乃花。しかし、貴ノ岩が付き人への暴行で引退して以来、表立った相撲協会批判はまったく聞かれないという。元後援会関係者が語る。
「貴乃花は相撲協会に退職届を出した昨年の9月以降は、相撲協会についてはまったく口を閉ざしている。かつての部屋の弟子とは、積極的にコミュニケーションをとっている様子も皆無。ましてや以前の貴乃花一門にも連絡はないばかりか、同期の浅香山親方(元大関・魁皇)とも没交渉で、相撲協会とは完全に絶縁状態ですよ」
中でも相撲関係者の間で有名なのは、現在、相撲協会のトップを務める八角親方(元横綱・北勝海)と、広報部長の芝田山親方(元横綱・大乃国)との確執だ。スポーツ紙相撲担当記者が明かす。
「八角理事長との確執は15年11月の北の湖元理事長の急死にまで遡る。もともと北の湖の薫陶を受けていた貴乃花は、協会内で順調に出世して次期理事長確実とみられていた。ところが、これに割って入ったのが八角親方。理事への根回しを経て一気に後継理事長になると、貴乃花を冷遇。貴乃花に近い事務方の人物と訴訟を起こすなど、対立を深めていた。その最中で貴ノ岩の暴行事件が発生した。協会の対応には積年の恨みもあり、あの記憶にも生々しい一連の怒りを爆発させたのです。その矢面に立った芝田山親方は貴乃花の顔も見たくないといった様子で、突然、相撲協会を退職した際にも憮然とした表情でした」
いわば相撲協会のツートップがそろって反貴乃花の急先鋒だけに、相撲協会との早期の和解はなさそうに思えるが、NHKのガブリ寄りに意外にも電撃的な展開もありうるというのだ。旧知の相撲ジャーナリストが語る。
「ここにきて、貴乃花が相撲協会に対して軟化しているのは事実。というのも、そもそも廃業のきっかけとなった貴ノ岩も引退してしまっているだけに、協会が怒りのホコ先を向ける相手ではなくなってしまった。むしろ、離婚して裸一貫になった貴乃花は、息子である花田優一クンが所属していた芸能プロダクションと業務提携をするなど、メディアの露出をしなければ食いぶちを稼げないと腹をくくったようです。長年、専属評論家を務めていたスポーツニッポンやNHKの解説者として登場するには、相撲協会と手打ちするしかない。それは本人も重々承知で、そのタイミングを狙っている。必ずしも八角理事長に謝罪せずとも、NHK経由で非公式に遺憾の意を伝えれば、全て丸く収まる雲行きです」
現在、「週刊文春」で連載されている「貴乃花 我が相撲道」も、当初は過激な相撲協会批判や家族との確執も暴露するかと思われた。戦々恐々だった相撲協会関係者も、蓋を開ければ、いわば「正史」的で常識的な内容にホッと胸をなで下ろしているという。相撲協会関係者が明かす。
「相撲協会内部でも『貴乃花は廃業したら文春で暴露本を出す』と言われていたので、連載でのソフトな内容に安堵しています。むしろ、世論は今でも貴乃花に好意的ですから、貴乃花=善、相撲協会=悪という構図を払拭したいというのが本音。せっかくの相撲人気に水を差さないためにも、NHKが和解を仲介するなら大歓迎」
すでに水面下では、双方とも和解に向け、待ったなしの状態なのだ。