こうしてK氏と宗像氏を後ろ盾にする貴乃花親方の姿勢を疑問視する親方が続出。さらに理事長選では「謀略」も巡らされた。「週刊新潮」でインタビューを受け、八角理事長批判を繰り広げた宗像氏である。いわく、
「八角さんは、私心なく相撲協会を運営しているとはとても思えない。あらゆる重要な物事は理事会の承認手続きを経なければならないというルールは無視され、コンプライアンスはないがしろにされ、ガバナンスもなっていない」
これを読んで「八角理事長はこんな人物だったのか」とショックを受けた人も多かったのではないか。記事はこう続けている。
〈「実は、相撲協会の外部理事の1人の元に殺害予告の電話がかかってきたのです。その外部理事は、すでに警察に被害状況を通報しています」(相撲協会関係者)
殺害予告の電話があったのは2月8日午前11時半。その外部理事は右翼を名乗る男から、
「(理事長選で)八角に投票しないと殺すぞ」
と、脅迫されたのだ。
「殺害予告の話は私の耳にも入っています。『殺すぞ』とはっきり言っているわけですから重大な事件です。理事長選の直前に起こった『異常事態』といっていいでしょう」(宗像氏)〉
みずからの当選のために卑劣な“恫喝”を画策したとして、八角親方は大いに男を下げた。しかしその後、本当に殺害予告の電話があったのかと、関係者の多くが首をかしげ始めた。
「当時の外部理事には海老沢勝二氏(元NHK会長)、徳川康久氏(靖國神社宮司)らがいましたが、誰が脅迫されたのかはっきりしない。結局、協会内では、貴乃花親方を当選させたい宗像さんの自作自演、作り話だったのだろう、となった」(元力士)
さらには春場所中の理事会などで、貴乃花親方が年上の理事に声を荒らげて詰め寄るなど、印象はどんどん悪化していく。元力士が続ける。
「純粋に改革派の貴乃花親方を信じて集まった親方の中には、素の姿を見てガッカリした人もいるらしい。都内にある貴乃花親方の自宅は今年3月8日の時点で、計2億円の抵当権が設定されている。しかも実父である先代貴ノ花から相続した中野の貴乃花部屋の土地建物の所有権も、08年に不動産総合商社に売却してしまった。早い話、借金返済のため、貴乃花一門の中心である部屋を売ってしまったわけで、一門の連合稽古は賃貸の部屋で行っていたことになる。長い大相撲の歴史の中で、こういう話は初めて聞きましたよ」
みずからの「勇み足」によって、「クーデター」の雲行きは一気に怪しくなっていったのである。